金木犀の香る夜 | ナノ
 10*

「ハハ、イキっぱなし。辛くねえの?」

「っ、!」

薬のせいで何度も勃ち上がってもう吐き出せるものもないのに必死に熱を吐こうとするモノを指で軽く弾かれ、それだけで頭に響くほど快感が走り抜ける。

何度か意識を飛ばしていたのか気づけば酷くグロテスクな玩具に犯されていた。先程と違うのはバイブを最大にしたまま前立腺を嬲り続けていることだろうか。

散漫とした思考では最早会話を理解することすら難しい。それでも次意識を飛ばしたら今度こそ薬に飲まれてしまう気がして、必死に握りしめた掌に爪を立ててその痛みで意識を繋げていた。唇は噛みすぎて血塗れになってしまい、流石に失血死なんてことは嫌なので爪を立てることにしたのだ。これでもかなり妥協している。


ここへ来てからどれくらい経ったのだろうか。嬲られ、気を失うようにして眠ったのは何回目だったんだろう。

もう何日も経っている気もするし、本当はまだ数時間しか経っていない気もする。時間の感覚なんてとうの昔に壊れてしまったから本当に何もわからなかった。お腹の減り具合から確かめようにも不健康な生活で食欲というものを失いつつある俺には判断のしようもない。ただ、思った以上に自分の体力が磨り減っていることに驚いた。

何かを言ってくる男の言葉は何故か聞こえなくて視界が暗くなる。

ああ、ここで寝たらまた殴られるのに。でも眠いなあ。眠いし、疲れたし、薬のせいで目が覚めたら狂っているかもしれない現実が何より怖かった。



「学習しろよ」

「〜ッ!!!」

さんざん弄られそれでも強制的に勃っていた性器に鋭い痛みが走り、上がりもしない声と共に体が跳ねる。突然の仕打ちに混乱しながら重い首輪を無理やり動かし視線を向ければ自分のモノの先端に突き刺さる細い棒。

「蓋しとけば空イキできて気持ちいいんじゃねえの?」

「っ、っ、!」

入れるところではない狭い尿道に無理やり捩じ込むようにそれ入れられてその痛みに思わず暴れるが、全身を鎖で固定されている俺がまともに動けるわけもなくただ、腰が動き引き攣るような呼吸が漏れるだけたった。

「はは、流石に痛ぇか?」

「あーあ、泣いちゃった。まあいいや、スイッチ入れちゃえ」

蔑み、嘲るように笑う声が遠くに聞こえて。それでも突き刺さる尿道バイブは無情にも動き出す。

尿道の痛みと、前立腺を刺激するバイブと、媚薬の回った身体。

様々な刺激がいっぺんに頭を直撃し、痛みと快楽がじわじわと広がるその感覚が怖い。暴れたいのに衰弱した体はもう言う事を何一つ聞いてはくれやしない。どうすることも出来ないこの現状が情けなくて、辛かった。

「…おい、晴?」

「なに、トんだ?」

和成と司がぐったりとしている晴を覗き込み、やがて息をつく。

「ッチ、壊れやがった」

「まあ耐えたほうだろ。それに、」

「っ、」

「まだ、壊れてないっぽい」

ぐりっと尻に突き刺さって自由に動いていたバイブを奥まで押し込めば、感じきったように跳ねる身体。うまく呼吸もできないのか荒い息遣いになりながらも、涙で濡れた瞳は正気を取り戻したのか弱い光を灯らせる。その瞳はすぐに鋭く二人を睨みつけた。

「…ははは、ここまでやられてまだ刃向かうんだ?」

「ッ、ぁ!」

楽しげに笑う司の口元に浮かぶ歪んだ笑みと同時に頬に走る痛み。容赦なく殴られ、じわりと広がる鉄臭い味。これ以上流血は御免だからと唇を噛むのをやめたのに意味がなくなってしまった。

「さてと、まだまだ遊べるよなあ、晴?」


果たして俺は耐えられるだろうか?

事故に合わせたと言った。死んだかもしれないと。

でもそれを信じるほど俺は愚かじゃない。もしそれが事実だとしたら今頃この部屋は乱交場へと発展しているはずなのだ。会議に行ってからこの2人は直接俺を犯そうとはせず、玩具で虐め抜いているだけだ。それはきっと、いつここへ到達するかわからない比良手組に警戒しているため。

ならば。



嗜虐的に笑う司をぼやける視界に映しながら強張った筋肉を動かし、挑発的な笑みを浮かべる。



こんな奴らに、負けるわけにはいかない。あいつらが来るまで耐え抜いてやる。

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