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「っ、ご馳走さん」
しばらくそうして血液を浄化してから今度は寝ているウィラの首筋に牙を突き立てる。
「ぅ…」
痛みに微かに声をあげたウィラはそれでも目を覚ます気配はない。その間に綺麗に浄化した血を与え、少しずつ戻ってきた体温に安堵しながらしばらく血をあげ続けた。
「…?」
ウィラが目を覚ましたのは血を与え終わってから少し経ってからだった。頭が働かないのかしきりに瞬きを繰り返し、状況の整理をしている。
「俺…?」
「身体、辛くない?血かなり吸っちゃったから」
「え?あ、うん平気」
言ってからようやく現状を把握する。恐らく俺はあのまま本当に寝てしまったのだ。というか、あそこまで血を吸われたら誰だって意識を保つことなんてできないと思う。
「つか、別に放っておいて良かったのに」
「馬鹿言うな、お前じゃ浄化できねえよ。普通の毒と一緒にするな」
「毒には変わりないじゃん」
言いながら俺は小さく伸びをする。体が重くて仕方が無いがこれはしょうがないのだろう。与えられた大量の血液がまだ身体に馴染みきっていないのだ。
そして、唐突に思い出す。そういえば…
「ニア、メアおいで」
声をかけれは俺の様子を伺っていた双子は慌てたように寄ってくる。
「ん、なに?」
「お兄ちゃん、平気?」
「俺は平気に決まってるでしょー?」
言いながら先程買ってあげたネックレスの入った袋を二人に渡す。
「なに!?なにこれ?開けていい?」
「お兄ちゃんからのプレゼントだ!!やった!」
はしゃぐ二人はその袋を開けて中身を確認した途端動きを止めた。
「「お兄ちゃん」」
「ん?」
落ち着いた二人の声に首を傾げれば二人は突進する勢いで俺に抱きついてきた。…痛いです。
「「愛してる」」
「おう、俺もお前らのこと愛してるぞ?」
幸せそうに笑う二人が愛しくてそっと頭を撫でれば二人は甘えるように擦り寄ってきた。未だに体重はディオに預けたままだからこの二人分の体重もディオに行っているだろうが俺は気にしない。
ええ、気にしませんとも。また勝手に人の血吸いやがって。俺の為だと分かってはいてもそれとこれは別だ。そもそも、俺なんかを助けたってなんの意味もないことをこの男はまだ理解していないのだろうか。
…汚れて、穢れて、体の奥底まで根付いたこの血の一滴まですべてが卑しい狼族だというのに。
「お兄ちゃん」
「んー?」
「お腹すいた」
「俺もー!」
俺に抱きついたまま訴える二人に苦笑しながらザクを見る。
「出来てるよ」
「「ご飯ーーーー!!!」」
「っ、うるさい馬鹿耳元はダメ!」
咄嗟に耳を塞いだが遅い。驚いた体は正直にケモミミを出現させていた。尻尾が出てないだけましなのだろう。
「…お兄ちゃん」
「嫌ださっさとご飯食って来い」
「そんな冷たいこと言わないでよ、減るものじゃないんだし」
「減るわ!俺の精神がゴリゴリ削られる!」
「「はぁ…わがままはダメだよお兄ちゃん」」
「ひぁっ」
ぐっと伸び上がった二人に片方ずつケモミミを弄られて声が出る。慌てて唇を噛み締めながら二人を引き剥がそうともがいた途端、その腕が背後の男に押さえられた。
「っ、ディ、んっ…ちょっと、待っ 」
「ニア片方貸して」
「ん」
返事をしたニアがメアと同じ方のケモミミを弄り、ぞくぞくと背筋が震える。性感帯だと解っていてここまで弄り倒されるのは初めてだ。
「や、だっ、離せっ!」
「暴れんな」
「ふあ…ん」
耳元でテノールの甘い声を吹き込まれたら終わりだ。声だけで体を震わす俺を嘲るようにくちゅ、といやらしい音が響く。
実際にはかなり小さな音だが聴覚の発達した今はもう大きな音にしか聞こえない。何より、体が嫌な熱を持ち始めている。早く、抜け出さないと。
「ぁ、な、」
かぷっと甘噛みしてはいやらしく舐めてくる男にただ為す術もなく乱れる。周りが見てるなんて分かってはいるが声を抑える余裕なんてものはとうの昔に消えた。
「ふっ、ぁ、やだ…ね、ディ、ォ」