淡い果実 | ナノ
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「いろんな実験をされていろんな血を混ぜられたり薬を飲まされたり、そうしてるうちに猫又の血にお兄ちゃんの体が反応したの。何故かは分からないけど…まあ、お兄ちゃん性格が気まぐれだしそこに反応したのかも」

「それでお兄ちゃんは尻尾が分かれるようになった。いつもはちゃんと制御してるけど、本当に死にそうな時とか危険な時だけ出てきちゃうんだよね」

双子はそう言うと真っ白な二本の尻尾を我が物顔で抱き締める。

「んぅ…」

微かな声が上がり目を覚ましたかとそちらを見てもウィラに起きる気配はない。ただ、ゆらゆらと尻尾が窮屈そうに動いていた。

「つかさ、それってコイツ今やばいんじゃないの?」

ディオの声に二人はもふもふと尻尾を弄りながら答える。平穏に寝かせてやれよ。

「だからお兄ちゃん、自己申告してたじゃん。死にそうって」

「滅多に言わないのにね。昔血まみれでぶっ倒れても平気とか笑ってたのに」

……それは平気じゃないだろう。普通に放っておいたら死ぬ。

「それでねディオさん」

「うん?」

「「そう言う事だから、目覚めたらなるべく早めに抱いてあげてね」」

声を揃えてにまにまと笑う二人にディオは苦笑する。ウィラが起きていたら慌てて口を塞ぎそうだ。

「言われなくても」

随分前にいれて貰った珈琲を飲みながら答えれば、アハトが口を挟んだ。

「ヤるのはイイけどちゃんと中に出せよ?」

「は?」

待て逆じゃないのか。出しちゃまずいだろ。

「発情期は相手の精液が体内に入ることで収まるんだから出さなきゃ発情期続くぞ。こいつを生殺しにしたいならドーゾ。報復は目に見えてるけどな」

「…了解」

「あとねー、発情期って媚薬みたいなものだから」

「お兄ちゃんめちゃくちゃ感度良いと思うけど気にしちゃダメだよ」

二人がこちらに背を向けながら言う。相変わらず尻尾を弄り倒すのをやめる素振りはない。

「離してやったら?」

「「お兄ちゃん滅多に尻尾触らしてくれないからヤだ」」

そうなんだったか?割と出しているイメージがあったが確かに考えてみれば二人がいるときは基本出ていない。

「ディオさん」

メアに呼ばれ見ればメアはふわりと笑う。優しい綺麗な笑みだった。

「「お兄ちゃんを末永くよろしくね」」

「いや、まあ…任せろ」

言いたいことは色々あるが双子が楽しそうなので何も言わないことにしよう。きっと双子もそれを望んでいるのだろうから。

「アハト、お菓子なくなった」

「もっと!」

尻尾を握ったまま片手でお菓子を漁っていたニアが声を上げる。子供らしくお菓子を催促する二人にアハトは驚いたようにそちらを見やった。テーブルの上にはかなりのお菓子があったはずだがそれは何一つ残っていない。

「…全部食べたの?」

「お腹すいたー」

「お兄ちゃんのご飯とおやつ食べたいけど疲れてるから我慢してるのー」

偉いでしょ?とでもいう勢いで言った二人にアハトはそれでも首を振った。

「駄目だ。野菜食え、野菜」

「じゃあ作ってーお腹すいたよ」

「もうお昼だよ?ねえ、野菜炒めと炒飯とラーメンと…あと揚げ出し豆腐、それから南瓜のサラダとコールスローがいいな」

「メア、唐揚げ忘れてる!」

「あっ、ほんとだ!!....デザートは杏仁豆腐とチェリーパイ、ガトーショコラで許してあげる」

笑顔で言った二人にアハトは唖然と二人を見やる。今のだけでも四人分はあるだろう。さらにデザートを忘れないところが双子らしい。

「相変わらずは底知れない胃袋だな。生憎そんな暇はないぞ」

ていうか、もう忘れたし。二人は自炊出来るのだから自分で作ればいいのだ。

「お兄ちゃんにアハトがお昼くれなかったって言いつけるよ」

「どうなる?」

興味本位で聞いてみればニアがふわりと笑う。

「フルボッコ確定からの下手したら死ぬ?」

「お兄ちゃんの世界は私たちで回ってるもんねー」

「その分俺たちもお兄ちゃん中心だけどねー」

きゃっきゃと笑い合う二人の言うことは本当なのだろう。見ていれば分かる。この兄弟には絆なんて生温いものじゃなく、自分を犠牲にしてでも守ろうとする意志がある。心の底から何よりも大事にしているのだろう。

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