1月 | ナノ
January この手にあるのはいつもそれだけ
「あーこたつから出れないー」
「天童は、少し動いた方がいい」
ランニングから帰ってきた若利くんに「おかえり」と声をかけ、「ただいま」と返したあとキッチンで水を飲む姿を感じながら縮こまる。外から来たばかりの若利くんは寒さをまとっていて、見るだけで冷えるような気がする。
「正月は寝正月って決めてるの」
「そうなのか?」
「うん、うそ。ただの不摂生」
「それは、いけないな」
「オレもランニング始めようかナー」
「この時期は走りやすい」
「そうだねえ……若利くん、はやくこたつ入りなよー」
若利くんの足が冷えているせいか、こたつの中の温度が一瞬下がる。
「若利くん実家帰らなくていいの? 年末年始ずっとこっちにいるよね?」
「それを言うなら天童もだろ?」
「オレはたまに帰ってるよ?」
「俺もだ」
納得いかないと目線で訴えれば、指先でおでこが押された。
「そんな目で見るな。…………実家に帰ると最近、恋人の有無を探られ、正直帰りづらい……」
「わあお」
「なんだその反応は」
「オレんとこと一緒って思っただけ。……うん、お互い大変だネー」
オレも若利くんも世間一般でいい歳と呼ばれる年齢だ。どこの家も悩みは一緒かと、この前実家に帰ったときお見合い写真が用意されていた若利くんのエピソードを聞いて、両手を叩いて笑った。
title by “ジャベリン”