長編2 | ナノ
優しき彼の
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屋上のフェンスにもたれかかればガシャンと嫌な音がした。冷たい空気が鼻に入って痛いや。竜太朗と一緒に帰るのに耐えられなくて終礼が終わって逃げるように屋上まで駆け上がった。同じマンションに住んでいると、意識しなくても帰りに出会う事が多いから。

もう、嘘でも友達だなんて思えないくらい竜太朗の存在が特別なものになっている。それなのにあんな事言われて、平気でいられるわけもなく、泣くのを堪えるのに必死だった。私の下手くそな笑顔を見てホッとした表情を見せた竜太朗と、その後ろにいる明の辛そうな表情を見るのが嫌だった。





「風邪引くぞ?」



「明……」




私の隣に腰を下ろした所を見ると屋上から連れ出すつもりはないのだろう。




「約束しちゃったよ……ずっと友達でいるって」




どうしてあんな事を言ってしまったのだろう。守れるはずもないのに。何も知らない竜太朗が酷く憎らしかった。ただ単純に私と今の関係でいたいと願う彼の、悲しい顔を見たくなくて。




「酷いよね、何も知らないとはいえさ、」



「竜太朗ばかり責められねーよ」




明は私の愚痴を聞きに来てくれたのではないのか。竜太朗を庇うなんて。でも、第三者の意見というのは大体が的を射ている。




「あいつが何も知らないのは名前が言ってねーからで、責めるなら伝えてからにしろ」



「分かってるよ…」




ずっと変わらずにいたいと願う竜太朗と、この関係に変化を求める私の間にはきっと、お互いにとって幸せな結末は出ないのだろう。それでも私は譲りたくない。この気持ちだけは、譲れないよ。友達でいられなくなっても、引き返せないところまで来てしまっているから。





「知らないままってのが、あいつにとっては一番良いんだろーな」




まるで自分に言い聞かせるかのような明の言葉に聞かなかったふりをした。探しているのは最良の答えなんかじゃない。私が今すべき事だ。そんなの、もうとっくに分かっているのだけど。




「手の感覚なくなってきた。そろそろ帰ろ?明」



「俺もうちょいここにいる」




座り込んで動かない明にまた明日とだけ言って屋上を後にした。


少しずつだけど確実に変わりだしていく世界に、恐怖と共に興味が湧いてくる。こうして、どんどん大人になっていくんだね。























(何も知らない彼女が憎らしかった)
(気持ちを伝えていない俺に責める資格なんてないのだけど)










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