神風の憂鬱
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ブレザーを脱いでネクタイを解く手、太陽に照らされた真っ白な肌は目に毒だ。その2つを私に放り投げた竜太朗は「よろしく」とだけ言ってまたバスケットをする集団に戻った。
昼休み、竜太朗と明に呼び出された私はバスケをするから審判をやってくれと頼まれた。運動が全く出来ない私は勿論ルールなんて分からなくて、それを理由に断れば点数を数えてくれるだけで良いとのこと。(明に俺の明日の昼飯がかかっているからと何度も念を押された)
また一つシュートを決めた竜太朗にキュンと心臓が鳴く。竜太朗チームプラス3点。(ホントは1点だけどオマケね)竜太朗は一見抜けているように見えて実はスポーツ万能だったりする。ケンカだって強いし。頭は残念だけど。
「あちーっ」
「お疲れ」
私の隣にドカッと腰を下ろした竜太朗の横顔を見れば、汗で頬に髪の毛が張り付いていた。気の利かないことに、今の私は水分もタオルも持っていない。ポケットを探ればミニタオルの存在が。竜太朗に少し待つように言って少し離れた水場でミニタオルを濡らす。冷たくなったそれを竜太朗の首に乗せれば面白いくらいの良い反応が返ってきた。
「ちゅめたっ!?」
「ぶっ!!ちゅめたかったでちゅかー竜ちゃん」
「うるせっ」
少しだけ顔を赤らめて私のタオルで汗を拭く竜太朗から視線を外した。このまま、この距離でずっといられたらどんなに楽しいだろう。そう思うのに、竜太朗が私と同じ気持ちになってくれたならどれだけ幸せなのだろうって、何時も考える。友達なんかより、幼なじみなんかよりもっともっと特別な存在。今以上に近いこの距離は、どんな感じなの?私が理由もなくその肌に触れて良い日は、何時か来るのだろうか。気持ちばかり先走って、全然動けないのだけど。
「あ、そういえば今日だ……」
「何が?」
「ん?んーとね、正の彼女の誕生日!プレゼント選びに付き合わされたから覚えちゃった」
「なんだ……ははっ、」
急に笑い出した竜太朗を不思議に思い見つめるが、彼は空を仰ぐだけだった。雲の流れが早い。さっき見た空は、今この瞬間にはなくなっている。太陽が雲の隙間から覗いてて、直視できないや。
「太朗ー!」
「よし!休憩終わりっ。俺様のミラクルシュート見て、惚れんなよ?」
「バッカじゃない!?」
走っていく白いシャツを見てもう一度言う。
「バカじゃないの………」
それは風に流されていくと分かっていたから言えたこと。
「……もう惚れてるよ」
(ほら、届かない)
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