長編2 | ナノ
いつの間にか
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幼い頃、多分小学校低学年くらいだったと思う。その時一番仲の良かった男友達が名前の事を好きで、それを知った俺はそいつと絶交した記憶がある。
中学の時告白された女の子となんとなく付き合ってたけど、名前と仲良くするのをやめて欲しいと言われたから別れたっけ。

そうやって俺は名前を縛って、名前にも俺を縛り付けてきたのだ。男友達よりも彼女よりも、一番に名前を優先してきた。でもそれは彼女に恋心を抱いていたからではなく、難しいんだけど言葉にするなら家族愛みたいな。母親を取られたくない子供みたいに必死だった。うん、今もあの時みたいに必死になっている。
なんとなくだけど感じていた俺とは違う名前の気持ちを確信させられて、だけど今までの関係を壊したくなかった俺は自己中心的な発言できっと彼女を傷つけた。その証拠に、朝から名前を探しているけれどまだその姿を見つけられない。




「名前ならさっきまで教室にいたんだけど…」




休み時間毎に隣のクラスを訪ねるがクラスメートからの答えは何故か毎回同じもので、避けられているのだと自覚し始める。

何なんだよ、もう友達でもいられないの?俺たちの関係ってあんな一言でちぎれてしまうものだったのか。結局名前も今まで俺に言い寄ってきた女たちと一緒なんだ。





「りゅーたろっ?」



「いでっ!?」




バシンと一発背中を叩かれよろめく。乱暴に俺に触れたその手に、親しげに呼ばれた名前に、胸の高鳴りと同時に安心感を覚えた。振り向けば笑顔の名前と眠そうな中ちゃんが俺を見ていて、たったそれだけのことなのに嬉しくて仕方ない。




「あ、ごめん。寝てんのかと思った」



悪びれる様子もなくヘラヘラ笑う名前はまるでいつも通りで、いつも通り過ぎてこっちが拍子抜けしてしまうくらい。さっきまでの俺の心配は杞憂に終わってしまったようだ。
そして挑発とも取れる発言を俺に向けた名前にいつものように言い返そうと空気を吸った時授業開始のチャイムが鳴る。




「やば!次視聴覚室に移動しなきゃだった!じゃね!」



「名前っ」




走って俺から離れて行く彼女を呼び止めたけれど、名前は顔だけ振り向かせ笑顔を見せただけだった。今日一緒に帰ろうと、そう言うつもりだった俺の気持ちを鈍らせるには充分な行動で。視聴覚室に移動することは、俺の呼び止めより大切なことなのか。立ち止まってくれなかった事に、ただ向けられただけの笑顔に違和感を感じずにはいられなかった。





















(作り笑いなのかさえ見分けられない)











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