20000hit企画 | ナノ
coldchristmas
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年末、クリスマスと大晦日という一年の中でも大きいイベントが迫っているということもあり、煌びやかな大都会東京はさらに浮き足立っていた。地元にいた頃から現実逃避のようにバンドばかりしていた所為か最近の毎日の忙しさに目が回るようだった。既にヴィジュアル系バンドとしてその名を日本だけでなく海外にまで知られていた有名なバンドにまさかの加入から生活が一変。CDリリースにツアー、武道館ライブ、休みなく働きづめていた所為か急激に冷え込んだ所為か最近体調が優れない。昔は日課となっていた名前への電話も週一となり月一となり最近はメールすら返していなかった。別に付き合っているわけではないけれどやはり彼女は特別な存在だった。簡単に言えば惚れてしまっていたのだ。出会ったのはプラのメンバーとなるずっと前で、ドラムが叩けるということ以外経済力も何も持っていなかったが、いつかこの世界で成功したなら彼女と一緒になろうと思っていたくらい。しかし現実はそんな甘いものではなく、プラに正式加入したことによりプライベートな時間は激減。それを嘆くつもりはさらさらないし、物足りなさを感じることはない。しかしやはり会いたいものは仕方ないし、クリスマスが迫ってきていることもあり、街中で仲睦まじい恋人の姿を見ると羨ましかった。
冷たい風の所為でほとんど感覚のなくなった鼻を啜り歩く速度を速めた時ポケットの携帯が震えた。



「もしもし、名前?」



『うん、ケンちゃん今大丈夫?』



「おー、だいじょーぶ」



また歩く速度を緩めて下を向き昔名前に貰ったマフラーに鼻先まで埋めこっそりと微笑んだ。



『風邪引いた?鼻声だけど』



「あ、そう?自分じゃ分からんけんさ」



『そう。引き始めなんじゃない?ちゃんと暖かくして寝るんだよ?』



これでは恋人というより親子の会話ではないかと思ったが、心配してくれていることが単純に嬉しかった。マフラーに更に深く顔を埋めて口元の緩みを隠す。



「それより、どしたと?」



『あー、うん。25日の予定なんかを伺いたくてね』



その日は勿論朝から仕事が入っていた。返答に迷ったが嘘をついても仕方ないし、言葉を選んだ所で結局は同じだと思い正直にその事を伝えれば残念そうな声。



「あ!でもでも、早く終わったら会える!かも…」



『良いよ?無理しなくても』



「無理とかしとらん!ってか会えん方が無理やけん!おいだって会いたかとよ」




別に恋人同士という関係ではなかった。しかしお互い同じ気持ちを抱いていることは確かで、だけどいつの間にかタイミングを逃し未だ友達以上恋人未満という曖昧な関係を長いこと続けている。ここはひとつ男を見せねば!おいは九州男児たい!と張り切るプラスティクトィリーのドラマー佐藤ケンケン。



「仕事マッハで終わらせて絶対名前に会いに行くけん!」



『ホント?』



「男に二言はなか!」



『の前に、本格的に風邪引かないようにね』




そんな間抜けじゃなかよ〜なんて軽く笑い飛ばしてから数日後のクリスマス、仕事へ出る直前に高熱で倒れメンバーには「来なくて良いって言うか絶対来るな移るから」と優しさの欠片もないことを言われ結局看病しに来てくれた名前に情けない姿だが会うことが叶ったのだ。





(名前〜もうそろそろおいの彼女に…)
(寝言で告白されてもなぁ……)





*あとがき
初ケンケン夢を書かせていただく機会をくださった沙耶様、ありがとうございます!これは凄く楽しく書かせていただきました。何と言っても博多弁!管理人は地元が九州なので方言で小説書くのって凄く楽しい!九州の訛りはこんなものじゃないですよ(笑)
それと、大変遅くなり申し訳ありません。見ていてくださるかは分かりませんが、ここでお詫び申し上げます。










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