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涙は何時だって横に流れる
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あたしは悪くない。だけど竜太朗が悪いわけでもなくて、ほんの些細な事がお互いに気にくわなかったりする。別に言うほど怒ってもいないのに、何故だかイライラしてつい大袈裟に当たってしまうのは長く一緒に居る所為なのか。分からないけど、面倒くさいというようにため息を零して部屋を出て行く竜太朗の背中を見ると何時も後悔する。すぐにその背中に抱きついて謝りたいのに、動かない手足が憎いのだ。
ひとりになった部屋は自分の息遣いしか聞こえなくて、さっきまで竜太朗に向かって大きな声を出していたから尚更静かだ。どうして何時も何時もこうなってしまうのだろう。理由は分かってる。あたしは竜太朗に甘えているのだ。実際こんな風に喧嘩をしても、折れるのはいつも竜太朗で、許してくれるからぶつけられる。イライラしてるのも、竜太朗に対してではなく、仕事だったり友人関係だったり、そういった外で溜まったストレスなんかを優しい竜太朗で発散しているだけで。だから、出て行く竜太朗の背中を見ると、一気に後悔。竜太朗が出て行く必要なんてないのに、出て行かなきゃいけないのはあたしの方なのに。こんな夜遅く、竜太朗は一体何処に行くのだろうか。追いかける勇気もなく、何時も二人で寝てるベッドにひとりで潜り込んだ。二人で寝るには少し窮屈なベッドに一人で眠ることに寂しさを感じるようになったのは何時からだろう。柔らかい枕じゃなく、ゴツゴツした竜太朗の腕枕じゃなきゃ安心出来なくなったのは何時からなの?
竜太朗の匂いのするシーツにくるまって、竜太朗の匂いのする枕に頬を押し当てて目を閉じればジワジワと布が湿っていく感触がした。右目の目尻から流れるものと、左目の目頭から流れるもので枕にシミが出来る。何時もそうだ。ベッドに潜り込んだ途端に涙が出てくるんだから。多分それは、窮屈なんだけど好きな人と一緒に眠る温かさを知ってるからで、ゴツゴツ硬いんだけど好きな人に抱きしめられる安心感を知ってるからで。一人はやっぱり寂しいと思うからで。濡れた枕に顔を押し当てながら願うのは、明日、目を開けた時に一番にあなたが視界に入ってくれていることだった。こんな我が儘で面倒くさい女、何時捨てられても可笑しくなんかないのだろう。そんな、いつ竜太朗の気持ちが離れていってしまうだろうとビクビクしながらも、あたしは謝ることも怖くて出来ない。

だけど、ずっと傍に居てくれなきゃやだよ。離れていかないでよ。大好きなの。








「また泣いてるの?名前」










夢の中、横に流れる涙を掬ってくれた人が居た。大きくて暖かくて優しい大好きなその手を離れてかないようギュッと掴めば、握り返してくれたような気がしたから。流れる涙は止まったような気がした。







涙は何時だって横に流れる
(掬ってくれるのがあなただったならいいの)









*あとがき
大変お待たせいたしました。しかもこんなんですみません。
主人公の語りのみという……しかし愛は詰まっております(管理人のですが)
かもめ様、企画ご参加いただきありがとうございました☆
















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