ハードルを飛べ!
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マンションの隣の部屋に住む明くんはあたしのお父さんより少し年下だ。良く家に飲みに来て、お父さんと世間話したり。あたしはその風景をテレビを見ながら横目で観察していた。そんなお父さんのお友達に、娘であるあたしが恋をするなんてどうかしてる。友達にも、有り得ないなんて笑われて、自分でもそう思うよ。でも明くんはお父さんの年代には見えないくらい若々しくて格好良くて。高校生のあたしが異性として意識しない方が可笑しいくらい。
「ただいまー」
「おー、おかえり」
たいして授業も聞いてないのに疲れた体で家に帰れば迎えてくれたのは既に出来上がった明くんだった。テーブルには空になったビールの缶が散乱してる。まだ空も明るい夕方なんだけど。
「制服じゃん!いいねー」
「エロオヤジ!!」
「オヤジ言うな。傷つくだろ。」
久しぶりに制服姿を見られた。明くんが家に来る時は大人っぽい服に着替えてたから。だって、制服なんて子供が着るものだし。余計年の差を感じる。
「お父さんは?」
「酒とつまみ買いに行った」
お母さんはエアロビの日だし、弟は部活だからあたしと明くんの二人きり。
うわ、なんか急に意識してきた。明くんの喉をビールが流れて、その音がリアルに聞こえるくらい静かなリビング。いたたまれなくなり部屋に行こうとすれば呼び止める声が。
「まぁまぁ隣に座りなさんな」
腕を引かれストンとソファに座る。近っ。つか、酒くさっ。
「名前ももう高校生かー」
「何その昔から見てきました的な発言。あなたここに越してきたの2ヶ月前じゃん。」
「あれか、今時の高校生は彼氏とかいんの?」
全然会話が噛み合わない。彼氏、あたしはいませんけど。てゆーか、彼氏いない歴年の数ですけど。しかし言いたくない。また子供扱いされそうだし。今だって、頭ポンポンしてさ、完全子供扱い。
「明くんには秘密」
「ケチ!居るんだ?彼氏」
あたしの頭を撫でていた手が離れて、明くんはテーブルに置いてあるせんべいに手を伸ばした。ボリボリと粕をこぼしながら食べるその姿はいい大人には見えない。
「どんなやつ?彼氏」
「へ?」
あたしに彼氏がいることが明くんの中で決定しているようで、聞き返したが彼は返答を待っているみたい。いや、どんなやつとか聞かれてもいないんだから答えようがありませんよ。妄想で答えろとでも?
「もうキスしたか?」
「はい?」
「それ以上は……胸は小さいよなお前」
「はぁ!?」
思わず両腕を胸の前で組んで隠す。今のセクハラ!!小さいの気にしてるのに酷いよ変態。
腰を浮かせて少し離れた位置に座り直したあたしを明くんは目を細めて見つめた。離れたくもなりますよ。
「ま、別にいいけど」
じゃあ聞くなよ。激しく思ったが明くんはまだあたしに彼氏がいると誤解したままだ。こんな変態だが一応好きな人。誤解されたままなんて嫌だ。
「てゆーかですね、あたし、彼氏いない」
まじかよ、といった様子であたしを見つめる明くんに我慢出来なくなり俯く。ああもう、そんなに吃驚しなくてもいいじゃん。高校生にもなって彼氏いないなんてそんなに可笑しいのかな。
あたしが離れた為若干空いている二人の距離を埋めるように明くんがピッタリとくっついてきた。またもや酒くさっ。
「………別れたのか」
可哀想に、と呟きながらまたもや頭を撫でられ、不覚にもときめく。だって、理由はどうであれ好きな人に撫でられるのって、ドキドキするじゃん。大きな手は、少し乱暴で、でも優しくて。やっぱ、大好きだよ。
「別れたんじゃないよ。最初からいないもん。」
撫でていた手を止めてあたしを見る明くんの頬に両手を当てて勢いで唇を押し当てた。勢いが良すぎたのか、まじ痛い!!明くんも同じで、唇を手で覆い顔を歪めていた。初ちゅーがこんなのってないよー。
「バカ。へたくそ。」
「だって……」
「目閉じろ」
既に近づいて来てる明くんに委ねるようにゆっくりと瞼を下ろす。
「ただいまー!!って、何してんだ?」
「何でもない!部屋行く!」
唇が触れ合う寸前に帰ってきたお父さん。吃驚して明くんを突き放せば体の大きさの違いか、あたしがソファから落ちてしまった。
リビングを出て行く間際、明くんを盗み見ればその口は"あとで"と動いていた。赤く染まる顔を隠すようにリビングを出た。
「何だー?名前のやつ」
「思春期なんじゃないっすか?お父さん」
「明くんにお父さんなんて呼ばれる程年離れてないだろー」
「予行練習ですよ、未来のお父さん。」
この後俺が殺されそうになったのは、言うまでもないだろう。
*あとがき
舞様、お待たせして申し訳ありません。小説自体は既に出来ていたのですが納得いかず何度も修正していました。それなのにこの完成度の低さは酷いですね。
完全自己満小説ですが、どうぞ読んでやってください。
この度は企画ご参加、ありがとうございました☆
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