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バカップルの定義
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夏風邪は厄介だ。
こいつよりも厄介だ。





「名前大丈夫!?死なないでーっ」



「勝手に殺すなコラ、あー、頭痛い」





なんだか朝から体がダルいと思ってはいたがまさか風邪をひいていたとは。体温計で熱を計って、その高さに吃驚したのもつかの間、熱があると分かった途端風邪特有の症状が出始めるんだから不思議。まぁ気持ちの問題だと思うんだけど。前から約束していた竜太朗との遊園地も行けるわけもなく、断りの電話をすれば頼んでもいないのに押しかけてきやがった。




「頭痛い!?薬飲んだ!?」



耳元で話さないでよ。響くんだけど。もう答える気力もなく、少し眠ろうと目を閉じればそれを邪魔する奴がいた。




「名前…?名前ーっ死ぬな!!」



「………ぅ、」



「う!?何!?」



「うるさーいっ寝かせてよ!!」




肩を揺さぶり耳元で大声を出す竜太朗に我慢の限界が来たあたしはダルい体を勢い良く持ち上げ枯れた声で言った。さすがの竜太朗もそれには吃驚したようで、静かになった。良かった、眠れる。更に悪化した気がした体をベッドへ沈めシーツを頭から被った。寒い、きっとまだ熱が上がるんだ。


朦朧とした意識の中、温かい塊がベッドに入り込んできた気配が………ん?




「……何してんの竜太朗?」



「だって名前寒そうなんだもん」



「てゆーか、移るから、もう帰りなさい」



「やだ!!」




ベッドの中、ギュッと抱きついてきた竜太朗に安心感を覚えた。だって風邪引いた時とか、特に寂しくなって誰かに甘えたくなるじゃん。でも本当に移ったら困る。




「竜太朗。離しなさい。」



「……ホントに離していいの?」




なんだこいつ。あたしが離してって言ってるんだから良いに決まってるじゃん。
ふと自分の手が竜太朗の服を握っていたのが目に入った。……あ、無意識に掴んでたんだ。本当は離れたくないよ。だけどさ、風邪移ったら困るのは竜太朗だし。




「うん、もう帰って?」




名残惜しいが握っていた服を離す。それを寂しそうな顔して見つめる竜太朗。そんな表情しないでよ。
あたしの背中に回していた腕を緩めゆっくりとベッドから抜け出した竜太朗の背中が離れていくのを、熱を持った瞳で見ていた。ジワジワと更に集中する熱に我慢できず気づいたら竜太朗の服の裾を掴んでいた。うわ、なんだ自分。凄い矛盾してるし。





「名前離して。俺帰れないよ」



「………」



「服伸びちゃうでしょ!掴むならこっち!」




あたしの手を服から離し、またベッドに潜り込んできた竜太朗は自分の手とあたしの手を絡ませた。熱を持ったあたしの手は、少し冷たい竜太朗の手の温度と混ざってちょうど良い感じ。




「移ったらごめん」




大きな胸元に顔を擦り寄せると急に襲ってきた睡魔に耐えきれず、深い眠りについた。






こいつは厄介だ。
たぶん夏風邪よりも厄介だ。



絶対離れられないんだから。










*あとがき

ラブラブ、じゃないですねタイトルにもあるようにただのバカップルですすみません。
刹那様、リクエストありがとうございました。こんなんでよければ受け取って下さい。
















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