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招待状は××行き
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幼なじみの優越というものだろうか。名前に一番近い男は自分なのだと信じて疑わなかった。何をするにもお互いに確認をとってさ、明日友達と遊びに行くとか実は隣のクラスのあの子に告白されたとか、名前との関係に口を出されたから彼女と別れたとか、最早恋人以上の関係だった。そんな名前とは上京してからはほとんど会っておらず、メールも電話も月に1回程度。一応連絡はとってんだよね。だって名前は俺にとって今でも一番大切な人だから。そこに恋愛感情はなく、物心ついた時から傍に居た名前に抱くのは家族愛に似たもので。
俺が女の子と付き合うことになった時、それを名前に報告したら自分のことのように喜んでくれたりとか、彼女と別れた時は俺以上に悲しんでくれたり、そういう反応に物足りなさを感じるのは名前に対して家族と同じように愛情を抱いているからと思っていた。もっと、ヤキモチ妬いて欲しいとか、そういう事を思うのは何も恋愛対象だけじゃないし。

でも今考えると、俺はそうやって自分の気持ちを塗り潰していたのかもしれない。そうやって自分の中に浮き上がる愛しい人への感情にいちいち理由をつけて誤魔化していたのかも。だって、だって名前が俺のことを家族同然に思っていたから。だから俺もそう思わざるを得なくなったんだ。本当はさ、大好きだったよ。勿論ひとりの女の子として見てた。俺に彼女ができたら嫉妬して欲しかったし、名前に彼氏ができたときは表ではおめでとうと言いながら心の中は早く別れろって思ってたよ。

でも、どんな状況でもやっぱり名前に一番近い男は俺で、今でもそうだと思ってた。でもそれはただの思い込みに過ぎなくて、今更後悔。どうしてもっと、もっと早く俺のものにしておかなかったんだろうって。幼なじみの優越というものだろうか。バカみたい。そんなの、目にも見えない絆なのに。

もし俺が、名前が苗字を一緒にする奴と出会う前に気持ちを伝えてたら、俺の名前を貰ってくれたのだろうか。そんな事、今更考えるだけ無駄で、寧ろマイナス。虚しい気持ちになるだけだ。

幼なじみって結局は一番近いようで一番遠いのかもね。なんか、近すぎて安心してるうちにお互いどんどん変わって行って、気づいた時には手遅れみたいな。ははっ、それなら幼なじみなんかになりたくなかったよ俺。





「………仕事行こ」





薄いピンクの結婚式の招待状をゴミ箱へと落とし、部屋を出た。
彼女のウエディングドレスを見る気には、どうしてもなれないのだ。




「俺は白無垢派なの。」




嘘。君が俺の隣に居れば本当はどんな格好だって良いよ。










*あとがき

黒猫様リクエストありがとうございます。こんな感じに仕上がってしまいました。
タイトルの××の部分はご自分で当てはめて貰いたいです。















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