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まだ乱れた息も整わないままで、手際よく使用済みの避妊具を処理した竜太朗さんはあたしの横にゴロンと寝転がる。クルクルとあたしの髪を指に巻き付け始めて、心地よい疲労感で重くなるまぶたの隙間からそれを見ていた。
「あ、髪が指にからまった」
「ん……?」
「近々、お兄さんに挨拶に行きたいなー」
「………え!?」
さらりととんでもない事を言った竜太朗さんに吃驚して飛び起きれば指に絡まっていた髪に引っ張られる。痛い。絶対何本か抜けた。
「何してんのもう、大丈夫?痛かった?」
「竜太朗さんが変な事言うから…」
「変な事!?お兄さんとはあれっきりだし、ちゃんと付き合うようになった事報告したいだけだよ?」
確かに兄とは最近会ってないし、連絡も取っていない為竜太朗さんとの関係に進展があったことはまだ言っていない。きっと吃驚するだろうな。なんだかんだで協力してもらったりしたし。
「だからまずはお兄さんに挨拶に行ってー、」
「行って?」
「今まですれ違った分を埋める!」
「ま、またですか!?」
あたしに覆い被さって至る所に唇を落とす竜太朗さんを拒む理由もないが流石にもう少し休ませて欲しい。
今まですれ違った分、かぁ。最初はただの体だけの関係だった。その時からあたしは竜太朗さんが好きで、竜太朗さんもあたしを好きでいてくれていて、体は繋がっても心は遠くって、虚しかった。あの時にちゃんと伝えていれば、そんな気持ちを味あわずに済んだのにね。
「余裕だね。何考えてんの?」
「勿体無かったなって、すれ違ってた時間が……」
「そう?あの時間があってこその今じゃない?」
そんな風にポジティブに考える事が出来る竜太朗さんが羨ましい。あたしはやっぱり後悔するばかりで、彼のようには思えないのだ。
「また他の事考えてる。集中してよ」
先程の行為の余韻が残る秘部に長い指が入り思考が中断された。
「昔なんて見ないで?今の俺を見てよ」
数回頭を縦に動かせば、彼は満足したように笑った。
あたしのナカにゆっくり押し入ってくる竜太朗さんの存在が大きくて、繋がった喜びが湧き上がる。今繋がってるのはきっと、体だけじゃないよね。だって、こんなに嬉しくて泣きそうになる。
やっと繋がった心が、もう離れる事がないように彼の手を強く握りしめた。
握り返してくれたことが嬉しくて、涙が零れたのは内緒。
end
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