長編 | ナノ
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最近竜ちゃんの機嫌がすこぶる良い。どうしたの?なんて聞かなくったって分かる。てゆーか聞いてもいないのに散々苗字さんとの惚気話を聞かされる独り身の俺の気持ちも考えてくれ。今だってほら、花撒き散らしながら電話してんの。相手が誰かなんて竜ちゃんのデレデレした顔を見れば一目瞭然だ。




「あー、ムカつく!」



「え?君、まだ竜ちゃんのこと諦めてなかったの?」



「もう諦めますー。彼女持ちの男には興味ないんで。これは私があの女に負けた事にムカついてるんです!」



「ま、無理でしょ。竜ちゃんと苗字さん、見ての通りだから」




タバコで竜ちゃんを指せばスタッフはそれを恨めしそうな顔で見つめて部屋から出て行った。




「正くーん」



「あ、ラブコールは終わったの?」



「うん。名残惜しいが切った。てゆーか、今日仕事早く終わらせよう!」




名前とDVD鑑賞するから!なんて言ってまた惚気出した竜ちゃんをあしらうのにはもう慣れた。まぁ散々焦らし焦らされもういい加減にしろって感じだったから、本人も嬉しくて仕様がないのだろうが、この調子が来週まで続くようならここはリーダーとしてガツンと言ってやろうと花を撒き散らす竜ちゃんを見ながら思った。






















走り慣れた道を車で飛ばす。赤信号に引っかかる度にイライラして、車も来ていないしムシしちゃおうかなんて考える度に名前の顔が頭に浮かんでやめた。名前が聞いたらきっと危ないからやめてと怒るから。名前と呼ぶことには大分慣れた。たまに無意識に名前ちゃんなんて言っちゃうけど。行為の最中なんかは特に。


マンションの部屋の前まで行き軽く前髪を整える。そういえば以前はインターホン押すのにも有り得ないくらい緊張してたな。今もドキドキはするんだけど。




「あ!竜太朗さんいらっしゃい」




今可愛い笑顔を見せる彼女、俺の恋人。俺の彼女。うん、かなり良い響き。




「お仕事お疲れさまです。準備出来てますよー」



家の中に入ればセットされたレンタルDVDに、飲み物におつまみ。プリンまである。




「その前に、名前ちゃんこっち向いて?」



今日初めての彼女の顔をしっかり見たいと思うのは当たり前の感情だと思うのだけど、名前はなかなか素直に此方を見てはくれない。俺に穴が開きそうなくらい見つめられて恥ずかしいらしいのだ。名前ちゃん、なんて言えば更に顔の赤みは増す。




「何時もみたいに名前って呼んでくださいよ」



「良いじゃん名前ちゃんで。昔を思い出す」



「そんな昔って程でもないですけどね」



「はいはい。分かったからいい加減俺の事見て?」




上を向く名前の頬は桜色で、何時までたっても変わらない彼女に俺はドキドキさせられっぱなしだ。



「えっ!?竜太朗さん!!」



二人並んで座っていたソファーに名前を押し倒せば案の定ピンクから赤に変わる顔色。恋人になる前からしていた事。あの時からお互い気持ちは変わっていないけど、やっぱり違いは出てくるわけで。想いが通じ合った今、それはあの時とは比べものにならないくらいの行為になる。



「え、映画!!」



「うん、繋がった後でね。」



それは心を繋げる行為




















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