長編 | ナノ
23
*************************
.









ラジオ収録も無事終わり、ちょうど夕飯時だった為メンバーとご飯を食べに行くことに。初めて行ったお店はエスニックテイストでいい感じ。心なしかカップルが多い気がするけど、男4人だからってそんなの気にしない。今日も1日頑張ったとビールを喉に流し込み、美味しい料理に気分も良くなっていく。





「ちょっとトイレ」



正くんがトイレに席を立っても会話は途切れることはない。





















「すみませんちょっとお手洗いに…」



昨日の晩に連絡があり、今日食事をすることになった。気が乗らないながらも断れず、ノコノコと来てしまった自分が憎い。お兄ちゃんには気がないならバッサリ断れと言われたが、別に迫られているわけじゃないし。まだこうやって食事に誘われただけだし。トイレの鏡に映る自分の顔が楽しくないことを物語っている。ため息ひとつ零してトイレを出たその時狭い通路で誰かとぶつかった。男性用と女性用のトイレは人一人通れるくらいの通路に向かい合う形で位置している為鉢合わせた場合が厄介だ。




「すみません」




軽く会釈をして席に戻ろうとしたが、何だか見覚えのある顔に、失礼ながらぶつかった男性の顔をもう一度見てしまった。




「あ、苗字さん?」



「長谷川さんっ」




うわ、どうしよう。軽く挨拶して席に戻って大丈夫かな。軽く混乱した思考のあたしに対して長谷川さんはごく自然に尋ねてきた。





「仕事帰り?お友達と来てるの?」



「え、いや、はい、そんな所です…」



「ふーん?」




はっきりしないあたしの答えに長谷川さんは語尾が上がり気味の相槌だ。いよいよ辛くなってきた為席に戻ろうと「それじゃ、」と言ったあたしを呼び止めた長谷川さんを正直憎いと思った。





「少し俺達の席に来ない?竜太朗もいるよ」



「えっ!?」



「こっちこっち」




吃驚してつい大きな声を出したあたしを見て長谷川さんはしてやったりな笑顔を見せた。強引にあたしの腕を掴み引いていく。どうしよう、心の準備が出来ていない。連れて来られた席はあたしとお兄ちゃんの友人が座っている席からそう離れていない。ってゆうか寧ろ近い。お互い見える距離だった。どうして気づかなかったんだろう。




「竜ちゃんにプレゼント連れて来たよー」




長谷川さんん!?何言ってるんですか。雑誌で見たことのある茶髪の入れ墨が印象的な人と金髪で小柄な人(あたしが雑誌で見た時は確か黒髪だったような?)があたし達が来た方向を向いて隣同士で座っていた。一体誰なんだこいつ。というような視線が痛い。軽くお辞儀をして竜太朗さんの後ろ姿を見た。長谷川さんの声にビールを飲みながら何事かと振り向いた彼は案の定吹き出していた。




「!?おまっ、きたねーな!」



「ご、こめっ…ごほ、」




ティッシュで口元を拭く竜太朗さんの視線がある一点を見ていた。それを辿ると、そこには未だあたしの腕を掴む長谷川さんの手が。え、何?もしかして勘違いしてる?長谷川さんとはたまたまそこで会っただけで、別に今日約束していたわけじゃないですよ。なんて言う勇気も掴まれた腕を離す勇気もなくただそこに立っていた。





「そこで偶然会ったんだー。座って?一杯飲もうよ」




そう言った長谷川さんはあたしを竜太朗さんの隣に押し込むように座らせた。うわ、か、肩が当たる。




「てゆーか!紹介して下さいよー」



「あ、えーと、苗字名前です。」



「あーたが噂の名前ちゃん!?」




う、噂!?もしかして竜太朗さんと以前関係を持っていたこと知ってるのかな。何か、居づらいな。店員さんにあたしの分の飲み物を注目した長谷川さんは、中山さんと佐藤さんを紹介してくれた。その間竜太朗さんは黙ったままで、やっぱこんな風に割り込んだら迷惑だったかな。
少し挨拶程度のつもりが色んな事を根掘り葉掘り聞かれ抜け出すタイミングがイマイチ掴めないでいた。どうしよう、人待たせてるんだけどな。




「あ、そういえばお友達と一緒だったんだよね?」




思い出したように切り出した長谷川さんが天使に見えた。




「連れてきなよ。この際一緒に飲もう」





やっぱ憎いです長谷川さん。





















*************************

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -