長編 | ナノ
22
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久しぶりの名前ちゃんは全然変わってなくて、と言っても二週間足らずでそこまで変化するはずもないんだけどね。この二週間、俺にとっては本当に長かった。もう永遠を味わった気分。永遠も一瞬も、大して変わらないんだよね。
名前ちゃんを無事家まで送り届けて、お礼を言う彼女を抱きしめたいのを全力で堪え、最後に頭を撫でて別れた。俺、よく我慢したよ。二週間前の俺だったら、抱きしめて、キスをして、流れによっては部屋まで上がり込んでいたと思う。
成長と、いうのだろうか。我慢することが成長なの?なんか違う気もするけど、自分の我が儘を通してたら前と変わらないし。


お兄さんが言ってた男のこと、結局聞けなかったな。後ろを歩く名前ちゃんは、何だか話しかけないでオーラを出してたし、振り向くこともできなかった。



俺は一体、どうしたいのだろう。いや、もちろん名前ちゃんの恋人になりたい。でも、だからといって告白するわけでもなく、寧ろ距離を置いている。気持ちの整理なんてつかないし、この二週間会いたいばっかりだった。それは、我慢しなきゃいけないこと?分からない。名前ちゃんが、迷惑だと思わなければ、そう願うことは悪くないのかも。でも名前ちゃんの気持ちは分からない。つまり、俺は何もかも分からなくて、だから怖くて何も出来ないんだ。こんな自分、本当嫌になる。








「おーおかえり竜太朗。とクロ」



「ただーいまー」





コンビニ袋からタバコやらジュースやらを取り出しメンバーに渡していく。黙って手を出しているアキラくんにタバコを手渡す際に無意識に零れたため息に彼は眉根を寄せた。




「人に向かってため息とは失礼なやつだなコラ」



「チッ、るせーな……」



「りゅ、竜太朗さんが黒い!!」





こんな感じでぎゃあぎゃあと近所迷惑なくらい騒がしい夜は更けていった。




























「うあーっ」




ベッドに潜り込み、足をばたつかせ、枕に顔を押し付けてお隣さんに迷惑にならない程度に叫んだ。
竜太朗さんだ!!竜太朗さんに会った。しかもお話したし、送ってくれた。これが叫ばずにいられるわけがない。もう、ヤバいです。溜まっていたものが一気に溢れ出してる感覚。心臓がどこからか飛び出してしまいそう。ぎゅーぎゅー締め付けられて泣いてる。痛いです。




「はぁ…………」




無意識にため息が零れる。憂鬱だからとかそういう事じゃなく、なんだか胸がいっぱいで、また無意識にため息を一つ零した。幸せが逃げるって?そんなのどーでもいい。それにあたしの幸せならもう離れていっちゃったし。今少しだけ戻って来たのかも。今日、竜太朗さんの零した言葉一つ一つが頭の中でグルグル回って、今日見せた表情が鮮明に浮き上がってあたしをドキドキさせるのだ。始まりから終わりまでをずっとリプレイしてるみたいに繰り返されて、あぁ、もっとちゃんと顔見ておけば良かった。もっとお話したかったな。
さっき別れたばかりなのに、もう会いたい。時間を巻き戻すことが出来たら、数分前に戻って、ううん、それよりもっと前に、間違った形でも良いから竜太朗さんの傍に居たあの時に戻りたい。そしたら今度は関係が終わらないように頑張るのに。


電話番号もメールアドレスも、知ってたってあたしがこんなんじゃ何の役にも立たない。携帯のアドレス帳を開いて無機質な文字を眺めた。何の、役にも立たないのにな。こんなに大切なんて変なの。




「はぁ…なんか、今夜眠れそうにないかも」






そう呟いたあたしの意識はいつの間にかなくなっていて、目が覚めたのはなかなか出社しないあたしを心配した会社の同僚からの電話によってだった。





















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