長編 | ナノ
15
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人生2度目の名前ちゃんのお家。緊張は前回の5分の4くらい。つまり慣れないってこと。しかも名前ちゃん電話出てくれないし、一応来たけどさ。インターホン押しても出てこない。

あ、なんか足音聞こえた。




「す、すみません寝てました!!」



ドタドタと駆けて来る足音、勢い良く扉が開き、若干髪の毛がボサボサになった名前ちゃんが出てきた。



「ごめんね、起こしちゃって……ぷ、」


「え!?な、何か可笑しいですか!?」


「いや、可愛いなーと思って。ここ、跳ねてる」



柔らかい髪に手を伸ばし跳ねている部分を撫でるようにして直した。あ、意外と頑固な寝癖だな。
寝癖に気をとられ、名前ちゃんがフリーズしていることに気づいたのは何度もナデナデした後だった。゙ごめんね、゙と独り言のように呟き手を引っ込めれば、現実に戻ったように目の焦点を合わせ顔を赤く染め上げる。そんな反応、反則だよね。




「立ち話もあれなんで、中にどうぞ!」


「あ、うん。お邪魔します。」



赤くなった名前ちゃんの頬に手を伸ばしていたのは無意識で、まるでそれを拒むように言葉を発し、家の奥に入って行った彼女に続いた。行き場をなくした手は残り香を掴んだだけだった。
やっぱ、無理だよ。残り香だけじゃ足りない。








「………竜、太朗さん?」



久々に抱きしめた名前ちゃんは相変わらず小さくて。あ、シャンプー変えたんだ。でも、名前ちゃん自身の匂いは変わらなくて安心する。




「きゃ、!?」



抱き上げれば軽く悲鳴を上げ俺の服にしがみついた。灯りが付いた部屋、テレビやソファーがある。ここがリビングか。じゃああっちが寝室かな。更に奥にある部屋に入れば薄暗い部屋にまだ慣れない目はベッドを映した。そこに名前ちゃんを下ろせば不安気な瞳が俺を見上げる。




「……嫌?」




名前ちゃんは頭を横に動かした。無意識に笑顔が零れて、久しぶりに口付けをした。





















顔にかかった髪を退かし、頬に残る涙の跡をなぞると軽く身じろいだ。情事が終わり直ぐ眠りについた名前ちゃん。行為自体久々で優しく出来なかったかもしれない。
このまま、この部屋でずっとふたり、何も心配せずに、毎日セックスしながら過ごせたら幸せかも。あ、でも歌はやめたくないし、それは無理か。

名前ちゃんの寝顔を見つめながら非現実的な事を考えているとインターホンが鳴った。こんな夜遅くにお客さん?もう寝てますよ。



「お?鍵開いてんじゃん物騒だなー。名前ー?」


え、入って来た!?しかも男!?どうしようどうしよう、とりあえず服を着ようとベッドから抜け出し散乱した衣服を身に付けていると荒々しく寝室の扉が開いた。




「………え、あ、あ!あの時のお兄さん!」


「こ、こんばんは。」




現れたのは名前ちゃんのお兄さんだった。着替え途中の俺を見て指を指しながら思い出したように声をあげ、しかしシーツにくるまって眠っている名前ちゃんとベッドの下に散らばった服を見、直ぐに状況を把握したのか黙って寝室を出て行った。き、気まずいんだけど。
しかし落ち込んでいる場合ではない。とにかく服を全て着て、寝室を出てお兄さんがいるであろうリビングに行った。




「あー、すみません邪魔しちゃって…」


「いや、大丈夫」



気まずそうにタバコの煙を吐く彼。俺の方が気まずいよー。戸棚から灰皿を出し、それにタバコを押しつけた。その行動の一部始終を見てた俺に疑問が生まれる。あれ、名前ちゃんって喫煙者だっけ?




「……この灰皿は俺専用なんですよ。名前は吸わないんで」


「あ、そうなんだ」


「名前と上手くいったんですね」


「え?あ、あー……それね、実は違うみたいな。ははっ」



乾いた笑いを零した俺に疑問符を浮かべるお兄さんから目を逸らし髪をぐしゃっと握る。誤魔化すことは出来ないと考え、今の俺と名前ちゃんの関係を彼女のお兄さんに伝えた。





















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