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あーまだかなまだかな。てゆうか名前ちゃんのことだからクリーニングに出してくれてそう。そんな事までしないで良いのに。
ぱちん。
洗濯機で十分なんだけどなー。名前ちゃんの家の洗剤いい匂いなんだよね。何使ってるんだろう。
ぱちん。
てゆうか寧ろ洗わず返してくださいなんちゃって。
ぱちん。
「いい加減にしろー!気が散る!!」
「わ!?急にどうしたのアキラくん」
「お前の所為だよ!さっきから携帯閉じたり開いたり、ウザい!没収。」
「ちょ!?返してよ!!」
名前ちゃんからの連絡待ってるんだってば。数日前連絡するって約束して別れたんだから。今日こそ来るはずなの。これが落ち着いていられると思う?携帯を閉じたり開いたりしてたのは無意識だったし謝ってもいいけど、何も没収することないじゃん。
「返してー!!」
「くっつくな!!お、着信?」
「は?ほんと返して!!殴るよ!?」
死に物狂いでアキラくんから携帯を取り返し、震えて着信を主張する携帯の通話ボタンを押し耳に当てた。
「もしもしもし名前ちゃん!?」
あ、もしって3回言っちゃった。
「……あ゛!?いや、さっきのは違くて、うん、はい…はーい。」
ちゃんと誰からか確認せずに出たのがまずかった。まさかの母親。そして母親に名前ちゃんと言った俺。恥ずかしー。これも全部アキラくんの所為だからね。アキラくんが携帯没収なんかするから慌てちゃったんだから。
「ぷ。名前ちゃんとはお話できたかー?」
「うるさいよ!」
「そんな怒りなさんな。ほら、また携帯鳴ってる」
「もう!母さんまだ何かあるの?」
『あ、……ごめんなさい、名前です。』
ぎゃあー!!また確認せずに出ちゃった。てゆーか俺、そういえばあまり確認して出たことないや。とりあえず鳴ったら通話ボタン押してたし。今度から気をつけよう。
『以前お借りした洋服なんですけど、クリーニングから戻って来たのでお返ししようと…』
「わざわざクリーニングまで出してくれたの?ごめんね、気使わせちゃって。今日仕事終わりに取りに行くから。」
『え、あたし持って行きますよ!』
「ダメ!俺が取りに行く!」
俺の電話を聞きながらニタニタ笑っているアキラくんとケンケンに名前ちゃんを会わせるわけにはいかないからね。あ、ちなみにこないだの正くんと気まずくなっちゃいましたの事件はプリン1個で水に流してあげました。俺ってば大人。
「分かりました。じゃあ、待ってます。」
『うん。また行くときに連絡するね。』
家に来てくれるんだ。それにしても、まさか母さんて言われるなんて吃驚したぁー。竜太朗さんちゃんとお母さんと連絡とってるんだ。そういえばあたし最近お母さんの声聞いてないや。
テーブルに置いていた携帯が震えた。何故かプラのメンバーさんと顔見知りのお兄ちゃんからだ。
「なに」
『冷たっ!!お前もう少し可愛い言い方しろよー』
「で、なに?」
はぁ、とため息がひとつ聞こえた。お兄ちゃん相手に可愛くしても意味ないじゃん。竜太朗さんが相手だと無意識に女の子らしくなっちゃうんだけど。って都合良すぎ?
『お前旅行バッグ持ってたよな?大きいやつ。あれ貸してくれね?』
「あー、うん。いいけど…お兄ちゃん持ってなかったっけ?」
『持ってっけどさ、小さくて。彼女とグアム行くにはちょっとさー』
「あ、そう。好きな時に取りに来て。じゃあ。」
お兄ちゃんはまだ何か言いかけていたけど惚気話はごめんだし。必要事項だけを伝え電話を切った。
「いいなー。ラブラブで…」
家でも一緒で、旅行も一緒で、ずっと一緒じゃん。あたしなんか理由がないと会うこともできないのに。理由かぁ……この前はしおりで、今回は洋服で、次は一体なんだろう。もういい加減偶然もネタ切れだよね。
偶然を願わなくても、ただ好きだからって理由で竜太朗さんに会いに行ける日が来るのだろうか。
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