短編 | ナノ
まるでラブストーリーのような
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何をやってもしっくりくる歌詞が思い浮かばない、所謂スランプというものは今までで何度も経験してきた。そんな時は一度考えるのを辞め、頭をリセットするのも大切。昨日からこもりっきりだった部屋を出て近くの公園までフラフラーと歩く。春の麗らかな気候が何とも心地よいですなー。あ、日焼け対策してくるの忘れた。俺自身はそんなに気にしてないんだけど、こういう仕事柄陽に当たらないようにって良く言われるから困る。でも人間生きるには太陽と水は必要不可欠ですから。今日はまぁいいか。




公園に行ってベンチに座って周りをぼやーっと眺めてみる。ラジオ体操をする年配の方や、砂遊びをする子供達の傍で世間話をするお母様方。
日本は平和だ。





「あ、こらシロ!!」



「?わ、」





俺の元へとやってきて膝に飛びついた白い犬。可愛い。猫買ってるけど犬も大好きなんだよね。
そして「すみませーん」と言いながら駆けてきた飼い主であろう女の人。あ、こっちの方が可愛い。




「ダメでしょシロ!お兄さんから降りなさい!!」



「あ、大丈夫ですよ。可愛いですね」



「すみません、でも汚れるから降りなさい!」




降りたくないと嫌がる犬を両手で抱えてリードを首輪につける彼女。俺の黒いジーンズは白く汚れてしまっていた。





「あ゙!!ごめんなさいっ、汚してしまって、」



パタパタと優しく俺の膝に触れる彼女の綺麗な手に見とれた。その手がまるで俺にかまってと言っているようで握りしめてしまいそうだ。実際は砂で汚れたジーンズを叩いて綺麗にしているだけだからそんな事出来ないけど。




「クリーニング代お出しします!」



「え!?いいですよ、そんな…」



代わりにあなたの電話番号を教えてください。なんちゃって。言ったら教えてくれるかな。




「え、でも、汚れ落ちそうにないですよ?じゃあ何かお詫びを…」



別に部屋着だからいいのに。律儀な子だな。嫌いじゃない、寧ろ好き。




「じゃあ、Plastic Treeってバンドが次に出すシングル、買って下さい。」



「え?」



「それじゃ、」





目を丸くする彼女を置いて家へ小走りで戻った。もっとあの場で彼女とお喋りしたかったけど、頭の中に溢れて止まらない沢山の想いを早く文字にしたかったから。溢れて止まらない沢山の彼女への想いを綴って形にしたかったから。





次のプラの新曲は、公園で出会った、白い犬をつれていた彼女に恋に落ちた男の話。





そのお話しの結末通り、現実の二人が結ばれるのは、発売7日後のことである。






















(好きな人に歌で想いを伝えるなんて俺ってロマンチストだよね)




(竜太朗さんの本業がアーティストじゃなかったらドン引きでしたよ……)











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