俺と私、似たもの同士
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「その胸元は性犯罪を生み出す素だと思いませんか?」
「え?」
夏真っ盛り、制服のシャツのボタンを3つくらい開けて、ズボンは折り曲げひざ下丈。男子はみんなしてること。なのに隣の席の名前ちゃんは俺にだけそんな事を言ってきた。
「事実私はさらけ出された有村くんの胸元に触発され鼻血を出してしまいました。」
「ぶっ!」
名前ちゃんの顔を見れば鼻にティッシュを詰めていて思わず吹き出す。顔は可愛い。お世辞じゃなくかなり可愛いと思う。でもちょっと、いや、かなりの変わり者で名前ちゃんの本性を知った男子は離れていくのだ。
別に性格が悪いわけじゃない。ただ、自分をしっかり持っているんだと思う。好きなものは好き、嫌いなものは嫌い、言いたいことははっきり言うし。
「この手がその悩ましい胸元に伸びるのも時間の問題だと思うので私が犯罪者になってしまう前に仕舞ってもらえますか?」
「分かった。ごめんね?」
シャツのボタンを2番目まで留めて名前ちゃんにこれでどう?と襟を掴んでアピールした。
「ホッとしたような残念なような複雑な気持ちです。」
「なにそれ?」
「胸元がさらけ出されたままでは私は犯罪を犯しても可笑しくない状態でした。でも見えなくなると残念です。有村くん綺麗だから……」
言って俺から目を逸らし俯いた名前ちゃんの長い睫毛が儚く揺れる。薄くピンクに染まった頬が、桜色の唇が、さらりと顔にかかる黒い髪が、全てが俺を誘っているようで今すぐ犯してしまいたい衝動に駆られる。
「名前ちゃんのそれは無意識なの?」
「え?」
「その表情も、仕草も、ぜんぶぜんぶ俺を性犯罪へと促してるんだよ?」
名前ちゃんは軽く目を見開いて、でもその後直ぐにとびきりの厭らしい笑顔を俺に見せてから静かに席を立ち教室から出て行った。
黙ってその後を追う俺。
向かう先は人気のない場所で、これから起こることは同意の上だから犯罪にはならないよね?
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