マーブル色した僕ら
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後方で聞こえる歓声に後ろ髪を引かれながらも俺はステージを後にした。
控え室に戻れば、もう重力に逆らう体力すら残っていないのか、中ちゃん正くん年輩組(失礼)はソファーに横になっていた。俺もいっそのこと床でも良いから重力に反発せず寝っ転がりたいのを堪えて携帯を持って控え室を出た。発信履歴の一番新しい名前の番号にまた電話をかける。最後に電話したのはライブ10分前のことだった。最後に会ったのは、もう何日前のことだっけ。ツアー中は仕方のないことだし、名前もちゃんと理解してくれているんだけど。その物わかりの良さがなんだか寂しかったりする俺は贅沢者だ。
プルルル、プルルル、無機質な呼び出し音がいつ途切れるだろうとワクワクしながら待っていたけど、それは無愛想な留守番電話サービスの女性の機械的な声に繋がった。あれ、ライブ終わったら電話するって言ったのにな。多分お風呂にでも入っているのだろうと、聞けると思っていた愛しい声が聞けなかった事に落ち込みながらも携帯を閉じた。
メイクを落とし、着替えを済ませてお世話になったライブハウスを後にする。車に乗り込み向かうは焼鳥屋さんだ。スタッフさんの中にこの辺出身の人がいて、地元では評判の店へ案内してくれるらしい。車の中で携帯を確認したが、名前から折り返しの電話は来ていなかった。
店につきまずはビールで乾杯する。ライブ後といえばやっぱりこれだ。出来上がってしまう前に名前と話したいなと思いまた携帯を開いた。しきりに携帯ばっか気にする俺はこの場では少し失礼かもしれない。待ち受け左下に着信があったことを示すアイコンが表示されていて、名前から連絡あったんだ!直ぐに席を立ち騒がしい店内から少し肌寒い外へ出てリダイアル。やっと名前の声が聞けるんだと盛り上がった気持ちはまたもや素っ気ない女性の音声により突き落とされた。また留守電かぁー。どうしてこうも噛み合わないのだろう。なかなかタイミングが合わない事に若干イライラしながらも、留守電にメッセージを残し暫く外で名前からの連絡を待ってみた。5分程経っても着信はなく、仕方なしに店内に戻り焼鳥を頬張る。おいしー。名前にも食べさせてあげたいな。
「たろー!来い!」
既に酔いが回り始めたスタッフにメンバー。離れて座る中ちゃんに呼ばれ其方に向かえばサザ○さんのタマの鳴き真似を何度もやらされるはめに。さっきからミャオしか発していない俺は人間なはずなんだけどなー。
「有村さん携帯鳴ってますよー?」
「!!!パスっ」
中ちゃんの隣に移動する前に座っていたテーブルに置いていた携帯が鳴っていると知らせてくれたのはスタッフの女の子だ。絶対名前だ!咄嗟に両手を構えキャッチの大勢をとれば、スタッフの子も緩やかに携帯を投げてくれた。やっぱ名前だ。通話ボタンを押そうとしたその時、やはりタイミング悪く携帯の着信音が止まった。えー……。しかしここで落ち込んでなどいられない。今すぐかけ直せば名前は必ず出てくれるはず。
『竜太朗?』
「もしもし名前っ!?あーもう大好きっ」
コール1回で電話に出た名前にやっと声が聞けた喜びが爆発した俺は店の中心で愛を叫んでいた。すると中ちゃんを筆頭に冷やかしの声が俺目掛けてとばされる。流石に気まずくなって、逃げるように店から外に出た。
「騒がしくてごめんね?」
『ううん。打ち上げ中?』
「うん。」
『ライブお疲れさま』
「名前の声聞けたから疲れ吹っ飛んだ」
『またまたぁー』
「本当だって!散々じらされたんだからね!」
『ごめんよー。お風呂入ったり、髪乾かしたりしてたから』
「だと思った。……あー、やっぱ、声だけじゃ足りないー」
『うん?』
「名前不足。さっきまでは早く声が聞きたくて仕方なかったんだけどね、今は会いたくて仕方ないの」
『あたしもだよ?だからツアー終わったらいっぱい構ってよね』
「じゃあさ、ツアー終わったら頑張った俺にご褒美ちょうだいよ」
『ご褒美?』
「うん。最高に気持ち良いやつ」
『………』
「あ、今やらしー想像したでしょ」
『するよバカ!』
「ほー、じゃ想像して待ってて」
『……じゃあ、皆さん待たせてるんでしょ?切るね』
「あ、うん。また寝る前にメールするから」
『起きてたら返信するね』
「うん、じゃ」
『またね、体調には気をつけてね』
「ふふ、お母さんみたい」
(うん、そうなの!あ、ごめん大分話し込んじゃった。)
(あ、ホントだ。じゃあ、切るよ?)
(うん、切るね)
(……切ってよ)
(そっちこそ)
(じゃ、せーので切ろ?…せーのっ)
(……………切ってよ)
(そっちこそ)
*あとがき
切甘………ん?切?みたいな感じに仕上がっちゃいました。ちくわ様、期待に沿えられずすみません。
リクエストありがとうございました☆こんなんでよければ貰ってやってください。
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