我が儘な僕の自分勝手な愛し方
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もし俺が名前で、俺とこの世で二人きりだったとしても、俺は俺と付き合わないと思う。
自分でも分かってる。我が儘で面倒臭い性格だってこと。だから名前はどうしてこんな俺の隣に居てくれるんだろう。我が儘も笑って聞いてくれるんだろう。いつ、名前の気持ちが離れてしまうんだろうって、ビクビクしながら俺はまた彼女を困らせるんだ。
「俺今日来てって言ってたよね?」
「本当ごめんね?でも、一昨日も言ったけど急に仕事が入っちゃって…」
「それは名前の都合でしょ?」
「ごめんなさい……」
電話の向こうにいる彼女は今にも泣き出してしまいそう。今、俺と名前を繋ぐものは目にすら見えない電波だけなのに。彼女が電源ボタンを押せば、それで途絶えてしまうくらい儚いものなんだ。
「もういいから……」
「なるべく早く終わらせて、竜太朗さんの家に行くから」
「別に無理して来なくていいよ」
「…………」
黙り込んだ彼女の息づかいが微かに聞こえる。多分、泣いてる。こんな酷い事言えば当たり前か。本当は、どんなに遅くなっても会いたいし、その為に仕事頑張ってくれるなんて嬉しい。本当は、言う程怒ってもいない。仕事なら仕方ないって分かってる、だけど気持ちがついて行かないんだ。
「……あたしは、竜太朗さんに会いたいです。今日だって、久々に会えると思って楽しみにしてたのに…」
あたしだけだったんだ……、独り言のようにポツリと呟かれた言葉を俺は聞き逃すわけもなく、今すぐに抱きしめたい衝動に駆られた。きっと、俺も名前と同じ気持ちだったんだ。なかなか会えないのは俺の所為で、久々にお互いの都合が合ったと思えば彼女は仕事。会いたくて、凄く楽しみにしていたのは俺だけだったのかとつい彼女に冷たくしてしまった。名前は悪くないのに、俺って本当面倒臭い恋人だ。でも、お願いだから離れて行かないで。これ以上距離が遠くなったら、きっともう掴めそうにないから。限界なんだ、繋ぎ止めることが。
「やっぱり、来て。何時になっても良いから。」
「うん、ごめんね?」
名前が謝る事じゃないのに。こんな気持ち、一時的なもので、それは彼女の顔を見た途端に消えていく。それくらいのもの。
ねぇ、だから早く会いにきて。
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