ハロー、ワンダフルワールド
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「ちょ、ちょっと!!」
「どしたの竜ちゃん?」
玄関でローファーを履きながら顔だけを此方に向けたのは竜太朗の彼女である名前。未だ寝巻き姿で寝癖だらけの竜太朗に対して、高校の制服を着てしっかり準備が整っている彼女は現役女子高生だ。慌ただしく駆けてきた竜太朗に一体どうしたのかと尋ねた。
「み、短くない?」
「は?」
言いながら竜太朗が指したのは名前のスカート。反射的に呆けた反応をしてしまった。普通の女子高生の名前にとってこの程度のスカートの丈は短いとすら思ったことがないのだ。周りの友達も、街で見る他校の生徒も自分と大して変わりない、寧ろこれより短い丈の人だっているくらいなのだから。しかし竜太朗には短く映ったのかもしれない。付き合いが短いというわけではないのだが、制服で会う機会は少なく、年齢が離れている竜太朗と少しでも釣り合いたく思い名前自身敢えて制服を避けていた部分があったからだ。しかし昨日、学校帰りにそのまま竜太朗の家に直行し泊めさせてもらっていた。翌日である今日も学校がある為何時も通りに起床し、竜太朗の家から登校しようとした時、引き止められたのだった。
「普通だよ?」
「絶対短い!!下着見えちゃいそうだもん!!」
「見えないよー」
「見える!!絶対見える!!階段下から覗かれちゃうよ!!」
「もう!竜ちゃんお父さんみたい」
「お、お父さん!?」
声をひっくり返しながら体全体を使ってショックを表現する竜太朗を名前は苦笑いで見つめていた。お父さんは流石に言っちゃまずかったかと後悔しながら。事実自分のお父さんだったとしてもおかしくない年齢差で、でもまぁ、見た目も中身も充分若い彼をお父さんと見ることなど出来ないのだが。
「お父さん……俺は名前のお父さん…?」
「あの、竜ちゃん…?」
「いつしか洋服一緒に洗わないで、なんて言われちゃうの…?」
遂にはしゃがみ込んで頭を抱えだした竜太朗を励まそうと名前も同じ目線まで屈む。
「名前なんて短いスカート履いて下着見せびらかしてれば!!」
「はぁ!?」
「もう俺知らない!!」
「ちょっと竜ちゃんっ」
いきなり顔を上げたかと思えば名前に対して挑発とも取れる言葉を吐き、拗ねた態度を隠そうともせずに部屋の奥へ歩いて行く彼の腕を名前は咄嗟に掴む。体の大きさから力の強さまで、女である名前が竜太朗に勝てる訳もなく玄関で転けてしまった。
「………ごめんね、大丈夫?」
「へーきへーき!」
転んでしまった名前に手を差し伸べ起き上がらせた竜太朗。幸い怪我はないようでホッとした。
「てゆーか!!見せびらかしたりしないよ!!」
「………」
「他の男に見せびらかしても良いの!?」
「絶対ダメ!!」
「ほらー、ダメなんじゃん。」
「ぅ……」
黙り込んでしまった竜太朗にもしかして自分より精神年齢は低いのではないかと名前は感じていた。
「竜ちゃんだけだよ?見て良いのも、見せたいのも!」
「…当たり前でしょ!!」
「言っとくけど、お父さんには見せないからね」
「常識でしょ!?」
「じゃ、学校いってきます」
「いってらっしゃい…ぁ、可愛い白」
「見た!?」
「見えたの。しかもフリフリ」
うん。こういうラッキーハプニングは短いスカートならではだよね。
うん。悪くないかも。
*あとがき
男の子にとってスカートの中は素晴らしい世界という意味がタイトルに込められています。管理人のただの想像ですが……(^^;
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