短編 | ナノ
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例えば鳥が空を飛ぶように、魚が海を泳ぐように、人が息をするように、俺が唄をうたうように。それよりも、もっともっと確かなこと。太陽が朝登り、夜沈むように、世界が廻るように。この世でいちばん確かな気持ちを俺は君に伝える。





「すき」




手を繋いで、瞳に映して、口付けをして、確かな気持ちを更に確かなものにして。当たり前のように廻る世界で当たり前のように言葉を紡げば、それはさっきよりも確実になっているんだ。




例えば鳥が空を飛ぶように、魚が海を泳ぐように、人が息をするように、俺が唄をうたうように。それよりも、もっともっと確かなこと。太陽が朝登り、夜沈むように、世界が廻るように。この世でいちばん確かな気持ちを俺が君に伝えても、君は確かなものをくれはしないけど。





「言葉ほど儚く脆いものってこの世にないと思う」




君は俺を否定する。俺の気持ちを否定する。どうして分かってくれないの。こんなにこんなに好きなのに、君にはこれっぽっちも伝わらなくて。じゃあどうすればこの想いを伝えられるの?そんなの、存在しないよ。言葉以外、存在しない。だから、否定する君は世界を否定していることに気付いていないのか。こんなくだらない世界だけど、君がいるから俺はこんなくだらない世界に生きているけど。こんなにもくだらない世界で、俺の、君に向けるこの想いだけがいちばん確かなことで、素晴らしいと思うから。





「言葉以上に確かで強いものは、この世に存在しないって、俺は思う」





だから言える。君がすき。
こんなにも確かで強い想いだから、言えるんだ。


例えば鳥は空を飛ぶから鳥であり、魚は海を泳ぐから魚であり、人は息をするから生きてゆける。俺は唄をうたうから俺である。それよりも、もっともっと確かなこと。太陽は朝登り夜沈むから美しく、世界は廻る理由は分からないけど。この世でいちばん確かな気持ちだから俺は君に伝えたい。


ねぇ、だから、どうか、どうか、届いて欲しい。信じて欲しい。君に同じことを求めたりしないから。






「俺は、そう思うよ」




「そう、なのかなぁ……」





見上げた空は今にも泣き出してしまいそうな程脆く、君がまた否定の言葉を吐いたならきっとひび割れてしまうだろう。
追い風に吹かれたお互いの髪が不規則に宙に舞って踊った。まるで風に攫われてしまいそうな程儚い君を確かに感じたくて、握った手に力を込めた。確かなものは、俺の想いで、想う君は、儚くて。あれ、確かなものは、一体なに?




「………うん。そうなのかも、しれないね」




握り返してくれた手が、温かくて、そうだ、確かなのは、俺と君。風に揺らされて、流れてしまいそうになっていた。


鳥が空を飛ぶのも、魚が海を泳ぐのも、人が息をするのだって、理由なんて分からない。それよりも、もっともっと確かなことだって、太陽が朝登り、夜沈むことや、世界が廻ることも。この世でいちばん確かなことに理由なんてないのだろう。それはいつ崩れても可笑しくはなくて、一年、半年、もしかしたら明日かもしれない。そんな環境で、俺は君と生きてて、手を繋いで、瞳に映して、口付けて。そうやって確かなものにしてきた。






「そうだったら、いいなぁ……」




「うん。俺は、そう思う。」









例えば鳥が空を飛ぶように、魚が海を泳ぐように、人が息をするように、俺が唄をうたうように。それよりも、もっともっと確かなこと。太陽が朝登り、夜沈むように、世界が廻るように。この世でいちばん確かな気持ちを俺は君に伝える。


君がそれを受け取ってくれることが、当たり前になる日を、泣き出してしまいそうな空に願うんだ。




風が俺のこころまでもを攫ってしまう前に











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