泣くのは今日で最後











「あっ、桜……」



ふと空を見上げた時にひらりと宙を舞う桜を見た私は、思わず呟いた。

今日、私達くのたまや忍たまの六年生の卒業の日になるけれど私はどこか浮かない気持ちになっていた。

そもそも、元は行儀見習いの為に三年だけいるつもりだったはずなのに……。

あの人と一緒にいたいと思っていたら、いつの間にか六年間ずっとここにいた。

そう、誰よりも大好きである彼と……。



「まだ、来ないのかな……」



そう寂しげに言った後、私はそっと目を閉じた。その時、



「名前……!」

「!金吾……!」



一発で自分の名前を呼んだ人が誰か分かった私はくるっと思い切りその人物の方を向いた。

そこには、息を切らせている金吾がいた。



「ごめん、遅くなって……!」

「……別に」



謝る金吾に私はムッとした後そっぽを向いた。

本当は、来てくれて嬉しいのに…………。



「……名前」

「ん…?っ、金吾……!?」



金吾がまた名前を呼ぶから少しだけ振り向こうとした瞬間、後ろから抱きしめられた。



「ちょっ、ちょっと…「このまま、聞いていて……?」

「えっ…?うっ、うん……」



このままって、やっぱり私達……。

そう思った途端、思わず涙が込み上げてきた。

嫌だよ、このままさよならなんて……。

これから来る言葉を聞きたくないと私はすぐに耳を塞いだ。けれど……



「僕と、結婚してほしい……」

「…!えっ……!?」



予想外の言葉が聞こえたから、私は咄嗟に顔を見上げた。

見上げた先には、少しだけ頬を赤く染めている金吾の顔があった。



「でっ、でも……!金吾のおじ様が……!」

「父上には、ちゃんと伝えたよ。どれだけ名前を大切に想っているか。そしたら、許してくれたよ」



そう言った金吾は、にこっと笑った。



「っ……!じゃあ、私達…一緒に、いられ、るの……?」

「うん、そうだよ……」

「〜っ…!!金吾っ……!!」



嘘みたいな本当に私は堪え切れなくなり、涙を見せたくないから金吾の胸に飛び込んだ。



「金吾っ……!だいすき、だよっ……!!」

「うん。僕も、誰よりも大好きだよ」



金吾は泣いている私の頭をそっと撫でながらそう言った。



「っ、金吾…強くなったね」

「……?そう、なの?」

「そうだよ…。昔みたいに、泣かなくなった……!」



一年の頃は泣き虫な貴方が、今では私を優しく抱きしめてくれるくらい心が強くなった。

ああ、六年も一緒にいられて本当に良かった……。



「…これでも、我慢してる方だよっ……」

「えっ……?じゃあ、今日は一緒に泣こうか?」

「っ……。ごめん、名前っ……」

「金吾、大好きっ……!」



私がそう言った後、私達はお互いにぎゅっと強く抱きしめながら泣いた。

これからもずっといようね、金吾……。























(これからは、いっぱいいっぱい笑い合おうね……!)



















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