笑顔をくれたキミに
「兵助兵助!ありがとうね!今まで本当にありがとうね!!」
「うん」
「いっぱい迷惑かけちゃってごめんね!わがままもいっぱい言っちゃってごめんね!」
忍術学園に入学して六年が経った。先輩が卒業し、また先輩が卒業し、気付いたら俺たちが卒業する番になっていた。
「兵助は優しいからいつも俺に合わせてくれてたよね。ごめんね!本当にありがとうね!」
入学してからずっと一緒の兵助。豆腐には目がなかったけど、俺よりしっかりしてて真面目で優しくて格好良くて、ずっと憧れていた。俺の自慢の友達。
「兵助がいてくれたから六年間頑張れたんだよ!あ、覚えてる?俺たち二年生まで苗字で呼んでたんだよ!名前呼びになったきっかけも覚えてるよ!兵助が俺の名前を格好いいねって言ってくれて、それでね」
「勘ちゃん、泣かないで」
「そうだよね!六年生にもなって泣くなんてやっぱ俺ダメだよね!でもさでもさ、もうさ、卒業したしさ、今日でみんなと別れちゃうしさ、俺さ、俺」
困ったような顔で俺の話を聞いてくれる兵助。泣いちゃダメだとわかっていても、涙は止まってくれない。ポロポロと頬を流れ落ちていく。
だってさ、俺、俺、まだ、
「俺っ、まだみんなと一緒にここにいたいよぉぉぉぉ!!!」
みんなと別れたくない。
いつもみたいに兵助と一緒に勉強して、雷蔵と本読んで、ハチと一緒に虫取りに行って、三郎と一緒に悪戯をしていたい。まだみんなと過ごしていたい。六年間じゃ足りない。もっともっと一緒にいたいよ。
「……勘ちゃん」
涙でぼやける視界の中、兵助がふわりと微笑んだ。
「俺は、勘ちゃんがいてくれたからこうやって笑えてる。勘ちゃんがいてくれたから、六年間が楽しくてあっという間だった」
違うよ、それは俺の方だよ。
「勘ちゃんが、俺に笑顔を教えてくれたのだ」
違うよ違うよ、兵助は、兵助は、
「勘ちゃんに出会えて、俺は幸せだった」
それは、俺の台詞だよ。
「ありがとう勘ちゃん」
「ありがとう兵助」
重なった言葉に、俺たちは声をあげて笑った。俺の目は涙でいっぱいで視界もぼやけていたのに、兵助の頬に流れる一筋の涙ははっきりと見えた。
ありがとうを何度でも
(ありがとう勘ちゃん)
(へへっ、ありがとう兵助!)