この思いは語らずとも
「お前泣いてんのか?」
俺達は、今日、卒業した。
今、この瞬間は、
六年間、苦楽を共に乗り越えてきた仲間との、一緒に過ごせる最後の時間である。
「なっ、泣いてねぇよバカタレ!お前だって泣いてんじゃねぇか!」
「泣いてっ、泣いてねぇよ!」
俺達は、仲が悪いやら犬猿コンビだと言われてきた。顔を合わせれば言い合いや喧嘩をしてきたから。
でもそれは、お互いを認め合っていたからこそ、お互いを越えるべき目標として意識していたからこそ。
「……なあ、」
「……なんだよ」
俺達に、言葉なんて必要ない。
「……最後に、さ」
「…………」
お前と何度も何度もやり合ってきた俺だからこそ、わかる。
「ひと勝負、やるか……留三郎」
そんなの、決まってんだろ。
「……ふんっ、やらいでか、文次郎」
さあ、最後の勝負いっとくか!
俺達は永遠にライバルだ、
文次郎!!
…………なんて、
言ってなんかやるもんか。
確かに伝わっているから
(最後は俺が勝つ!)
(俺が勝つに決まってんだろ!)