交差して繋がる
「「あ」」
卒業式も終わり、友人達と別れて帰路につけば、別の学校へ行っていた幼馴染みと顔を合わせた。
「よ、よう。久しぶり」
「う、うん。久しぶり」
八左ヱ門が手を上げ声を掛ければ、名前もおずおずと手を上げて答える。
元々家が近所なのだから、鉢合わせ無かったのが不思議なくらいなのだが、タイミングが悪かったのか、鉢合わせることは少なかった。
思春期特有の、異性を意識し始めていた頃からこのぎくしゃくしたもどかしい関係は続いていた。
けれども元来仲の良い二人は、話が弾むにつれぎくしゃくした雰囲気も無くなり、三年間の学校生活の話や生き物の話で盛り上がる。
「いい奴なんだよ皆、人気も凄くてさ」
「そうなんだ。こっちにも来てたよ、その人達の話」
八左ヱ門の友達だったんだね、世間は狭いなと笑う名前になんだ知ってたのかと言う八左ヱ門。
「名前だけね。そんなに面白い人達なら会って見たかったな」
いずれ会えるだろう、何だったら俺と一緒に皆に会いに行くか、と誘おうとしてはたと止めた。
確かにあの四人はいい奴だし、名前は大人しい部類に入るからあの四人ともきっと仲良くなれる。
けど、何か、嫌だ。
「そうだな。うん、そう。」
うんうんと一人で頷く八左ヱ門に名前は首を傾げた。
「?どうしたの?」
「えっ、いや、なんでもねぇよ?」
慌ててそう言って頭を掻きながら笑う。
そう、もし、もしも四人に会って名前がその内の誰かに恋をしたら。名前に恋をされたら。―――応援してあげられるのだろうか?
足を止めて考えた。
名前が話す先は俺じゃなくて他の誰かだったら、俺は。
「八左ヱ門?」
嗚呼やっぱり、もしもの話でもこんなに嫌なんだ。応援なんて出来る筈もない。
「名前……」
この幼馴染みの……名前の隣は俺がいい。
八左ヱ門はやっと気付いた自分の気持ちに、友人達が常々言っていた『馬鹿』という言葉に心底同意した。
「こんなに長く一緒に居たのに、今気付くなんて……本当に俺、馬鹿だ」
「え?」
何が何だか分からないといった表情の名前に、八左ヱ門は改めて向き直る。
「なあ名前、俺やっと気付いた。俺、お前が好きだ」
ぽかんとした名前を見つめる八左ヱ門の真剣な表情に、遅れて理解したらしい名前の顔に火が灯っていく。
「考えたんだ、俺。頭悪いし女心も分からないかもしれないけど……それでも俺、名前の傍にいたい」
「俺と、付き合ってください」
一呼吸置いて吐き出した八左ヱ門の言葉に、名前は八左ヱ門の手をとり、震える自分の手を重ねた―――