気づく

「あ、れ?」

先輩たちを見送るから門の前に集合と言われて歩いてみたはいいけれど、こんなに遠かったかな。

「入り口、どっかいった」

何年経っても学園の構造が把握しきれず、自分でもいよいよ頭を抱えてしまう。
でもまぁ。
今年は委員会で世話になった先輩もいないし、別に自分一人いなくてもいいかなんて思い直す。
卒業、か。
そういえば、あの人はどうするんだろう。
ふと、とある先輩の顔が浮かんで、それからすぐに自分には関係ないことだと頭から追い出した。

「お前、わざとか?」
「あれ、鉢屋さんだ」
「門集合だって言われたろ。最後くらい、先輩を見送れ」
「いや。門がどっかいったんすよ」

素直に言えば鉢屋さんは、お前はそういうやつだったなと頭を抱えた。
不破先輩と同じ顔なのに、最近ではどちらが不破先輩でどちらが鉢屋さんか見分けることができるようになっていて、自分でも驚いた。

「鉢屋さん卒業したらどうすんの?やっぱり不破先輩と同じ城に就職したの?」
「忍者がやすやす個人情報を流すと思うか?」
「鉢屋さんて、案外ケチだよね」
「ああ?私に喧嘩売ってるのか?」
「とんでもない」

怖い顔した鉢屋さんに両手を挙げて降参のポーズをとってみれば、鉢屋さんは思いっきり顔を顰めた。
ねぇ鉢屋さん。
頭のいいあんたなら、分かるだろ?
俺、一発で見分けられるようになったんだよ。
どんなに迷っても、鉢屋さんのことはすぐに見つけられるんだよ。
今だってなんとなく、鉢屋さんならここにいるかなって直感したんだ。
すごいでしょ。
ねぇ。この気持ち、なんだと思う?

「鉢屋さん、行かないでよ」
「はぁ?」
「俺、鉢屋さんのためだったら何でもするよ」
「…次屋?」
「だからさぁ。まだ、一緒にいてよ」

気づけばボロボロと子供のように泣いていて、鉢屋さんが困った顔でこちらを見ている。

「バカ次屋」
「は、ちや、さん…」
「私に会いたくなったら文を飛ばせ。会いに来てやるから」

ーーーだから泣くな。

初めて触れた鉢屋さんはどうしようもなく温かくて、蜂蜜の匂いがした。





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