片想い卒業記念











「えー、今日で君達はここを卒業するのだが……」



卒業式を終え、一度クラスに戻った後最後になる土井先生の話を皆一生懸命聞いている。

けれど、私は…………



「(きり丸君……もう、貴方の姿を後ろから眺める事が出来ないんだな…………)」



3年間同じクラスで、一度は隣になって、そして……ずっと好きだったきり丸君の後ろ姿を、私は先生の話の間ずっと見ていた。

本当は、バレンタインの時に告白出来れば良かったのかな……。

そう思っていたら、とうとう先生の話が終わった。

後は……1年間ずっと過ごしていたこの教室とお別れするのみだ。

それは、別の大学に行ってしまうきり丸君ともお別れになる事だ…………。



「っ、きり…丸君……」



土井先生の話を真剣に聞くきり丸君の姿を見た瞬間、私はふと想いが込み上げ、目が滲んできた。

ずっとずっと、このまま想いを告げずに終わっちゃうのかな…………。

そう思っていたら、



「よし……。皆、ここを出る前に全員でハイタッチして出よう!」

「えっ……?」



土井先生の言葉に、私はようやく土井先生の顔を見た。

今、皆でハイタッチしてって言ったよね……?

まだよく分からないまま、次々と名簿順から一人ずつハイタッチをし始めた。



「名前ちゃん、今までありがとう……!」

「名前、大学でもよろしくな!」

「僕、その……名前ちゃんの事が「はいはいは〜い、後が詰まるからさっさと行くよ〜」

「えっ!?ちょっま……!?」



そんなこんなで、次はいよいよ私の番だ。

……つまり、きり丸君ともハイタッチするって事だよね…………。

そう考えながらどんどんとクラスの皆とハイタッチし、そして……



「あ、きり丸君……」



いよいよ、彼とハイタッチをする時が来た。

悲しい気持ちが大きいはずなのに、何故か心臓がドクン、ドクンと大きくなっている。

ああ……私、やっぱり彼の事が好きなんだな…………。すると、



「ん……?名前、ホレ」

「へっ…?あ、うっうん……」



きり丸君がホレと手を出してくれ、私は慌ててきり丸君の所に駆け寄り、ハイタッチした。



「名前、いつも昼飯くれて本当にありがとな!」

「ふぇっ…覚えて、くれてたの……?」

「何言ってんだよ。3年間もずっと同じクラスだったんだから当然だろ?」



そう言いながら、彼はニッと笑った。



「あーあ、もう名前の弁当のおかず食べれねーのかぁ……」

「…っ、……」

「え、名前……!?どうかしたのか、具合わりぃのかっ……!?」



違うの。違うのに……涙が、止まらない…………。

私だって、きり丸君の大好きなおかずをさりげなく聞いてそれを作って、ワザとお腹いっぱいだから少し食べる……?って言ってたんだよ……?

本当は、ちゃんときり丸君の分だけのお弁当を…作りたかったんだよ……?

きり丸君…本当に、本当に……。



「あ、りがと…きり丸、君……!私、わた、しっ…だいすき……!!」

「!?名前……?」

「きり丸君の事、ずっとずっと大好き、だよっ……!」

「名前…………」



勢いでだけど、やっと想いを伝えられた……。

後は、早く家に帰ってこの想いを忘れるだけだ…………。

そう思いながら慌ててきり丸君から離れようとした。その時……



「待てよ」

「っ、え……?」



手首を掴まれ、私は目を丸くさせながらきり丸君の方を向いた。



「……オレ、まだ気持ち言ってねーけど?」

「あっ……。でも…」

「名前」

「ふぁ、はいっ……!?」

「…………オレも、お前が大好きだ!!」

「……!きり丸君…………!」

「あ、後でメアド交換してーから先に校門前で待っててくれねーか?」

「う、うん…!待ってる……!」

「そか、これからもよろしくな……!」

「うん……!」



ずっとこの想いは叶わないと思った3年間。

でも……もう、悩む事はないんだな。

だって…これから、貴方といっぱいいっぱい思い出を作るから……!























(そして、これからは両想いになるね……)











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