腕をくんで突っ立ってるのが二人。仁王立ちで無言の圧力をかけてんのが二人。頭を抱えてるのが一人。そのなかで睨み付けるように私を見下げるのは全員。あー‥うん、なんかごめん。視線をそらしてもどこまでも軽蔑に似た目を向けてくる彼らに誤魔化すように軽く下を出したらどんっ、と机の足に蹴り一発。瞬間、机が揺れて紙が落ちた。それを拾った兵助がどうしたらこんな点数が取れるんだと呟く。お、教え方が悪かった、のかな?なーんて冗談半分に答えればそのままくしゃりとテスト用紙を握り潰した。いや、ほんと、まじで嘘です。ごめんなさい!!



「謝れば済む問題じゃねーよ、俺らの三日無駄にしてこれかよ」
「へ、兵助怖いよ、」
「どんな頭の構造してんの?割って見てみたいんだけど」
「ぇえ‥雷蔵様降臨するの早くない?!」
「きっとすっかすかの頭に水が六割詰めてあるからこんな結果なんだよ」
「残りの四割が身体なの!?」
「‥なんでだよっ!!人の身体は六割が水って教えただろ!!」
「こ、ごめん三郎‥」
「ほんとバカだなー」
「お前もだろうがハチ」



ギリ赤点避けた奴が威張るな。睨み返せば赤点取った奴に言われたくねーなー、と笑いながら返された。悔しい。とにかくこのバカの反省会だ、と兵助の呼び掛けに返事して皆で私の机の周りに椅子を寄せる。机を覗きこんでは皆して顔をしかめる。そりゃ、なるかと取った点数を一通り眺めて納得



「なんだ?この赤点のオンパレード」
「情熱の薔薇が咲き誇りました」
「次は机の足じゃ済まないよ」
「ごめんなさい、だからスタンバイしないで勘ちゃん」
「でも見事に綺麗な数字だよな」
「ハチ、それ褒めてないよ」
「頭の悪さは教えた時にわかったけどあの時はもっと出来てただろ?」



なんかさらっと失礼な言葉が聞こえた気がするがこんな悲惨なのを取って今更言える立場じゃないからあえて受け流す。言ったら足が亡くなりそうだ。三郎の疑問に確かに、と兵助が頷く。むしろ教えたらすぐに覚えなかった?顔を向ける雷蔵にそういや、と口々にこぼす。



「教えたらそっか、ってすぐに納得して書いてたよな?」
「むしろハチの方が大変だったよな」
「俺だって生物教えたし!!」
「でも最終的に手にかかったのはハチ、お前だ」
「お前だハチ!!」
「結果的に赤点取った奴に言われたくない!!」
「会話が低レベル‥」
「そうだよな‥結果的に赤点だったんだよな‥」



わかったはずなのになんで赤点だったの?雷蔵がうんうん頭を悩ませて問えばだって忘れたんだもん。テスト用紙をファイルに入れて片付けているとえっ?と集まる視線にえっ?と顔を向ける。いや、だって



「嘘でしょ‥!?」
「勉強会してよし、完璧って思って勉強しなかったら忘れちゃってさ」
「鶏並みの早さだな‥」
「でもさ、せめて得意科目とかのは覚えてないの?」
「こいつの得意科目って‥何?」
「得意科目‥」



‥自習?浮かんだものをさらっと口に出せば彼らはごめん、なんでもない、聞いたこっちが悪かった、と何かを諦めたように口をつぐんだ。