「なあ、斎藤」

小首を傾げながら、朔が尋ねた。

「俺ってどこが女っぽいんだ?」

いきなり何を言い出すんだと思いながら斎藤一は答えた。

「何を。朔さんの物の言い方は男の中の男じゃないですか」

斎藤は皮肉混じりの返事を返す。朔の良いとは言えない態度について言いたかったらしい。

「そうじゃなくて」

少し声を張り上げる様子で朔が言った。

「見た目だよ」
「見た目?」

斎藤は朔の頭のてっぺんから爪先までしっかりと見た。今まで男としてしか見てこなかったので、急に女らしいところを聞かれてもすぐに答えることが出来ない。無表情でしばらく考えていた。朔は斎藤が答えを口にするのを大人しく待っている。悩みに悩んで斎藤がやっと口を開いた。

「…髪?」
「何で。総司だって総髪だろ」

自分でも分かっているが、総髪とは男子の髪の結い方である。髪ではないとすれば、

「顔立ち…でもないな」

斎藤の知っている"女"というのはこんなにムスッとした顔ではない。顔なら沖田の方が幾分女性らしくはある。

「肩…」
「俺の肩は女ほど華奢じゃねえ」

それもそうだ。女の肩では刀などそう簡単に振るえないだろう。

「そもそも女みたいだと誰に言われたんです?」
「…総司」
「本人に聞けばいいと思いますが」

色々と思考を巡らせて疲れたのである。生真面目そうな斎藤もこればかりは考えるのが面倒になってしまったようだ。

「そうだな…ちょっと問いただしてくるか」

朔の顔がぱっと明るくなった。何故『問いただしてくる』で笑顔になるのかは不明であるが。しかしその向日葵のような笑顔には、少年のような少女のような生き生きとしたものが感じられたのである。

(ああ、これか)

綺麗だと思った。沖田は朔の中の奥ゆかしい何かに気付いたのだろう。

「じゃあ殺ってくる」
「せめて半殺し程度に」

朔はその笑顔のまま走って行ってしまった。斎藤は思った。

(あの人は、少年だ)



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私には男主の笑顔が想像できない


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