※転生パロ




おかしな話だが、自分は頭がイカれてしまったのではないかと考えるようになった。ボサボサの短髪や毎日着ている制服、いつもつるんでいる友人など、当たり前にそこに存在しているもの全てに違和感というものを覚えるのだ。最近は自分の名前ですら聞き慣れない単語のように感じる。この世に生を受けた瞬間から今までずっとそう呼ばれ続けてきたはずなのに。明らかにおかしいのだ。
おまけに変な夢までよく見るようになった(先程の現国の授業中に居眠りした時もである)。夢の中の俺はどうやら違う名前で呼ばれており、見知らぬ人と楽しそうに会話をしたりふざけあったりしている。と言っても靄がかかっているように視界が悪く、水中にいるかのように周りの音が聞こえにくいので、相手の顔やら声はほとんど分からない。ただ分かることは、底知れぬ安堵感に包まれていることくらいだろうか。

「ああ分かんねぇ」
「授業がか?」

ぼそりと漏らした言葉に反応を返す"友人"。頭も顔も運動神経も良くて女子にモテるという、漫画に出てきそうな彼もまた自分が違和感を覚えてしまう一人である。彼は現国の教科書やらノートやらを片付け、既に次の授業の用意を済ませていた。因みに授業が分からないのも確かだ。

「次は日本史かぁ」
「幕末じゃん、楽しいよなあ」
「それはお前だけだ」
「今日あたり新選組くるぜ」

あんな暇な授業が楽しみだとは、歴史好きが羨ましい。偉人といったら黄門さまくらいしか出てこないぞ俺は。他の教科よりも厚みのある教科書を鞄から出し、無造作に机の上に置く。日本史とか居眠り以外することあったっけ。さっき現国で寝たけど。
ああかったりィ。ため息を吐くと同時にチャイムが鳴り響いた。


授業が始まってから20分経ったか経たないかくらいで既に飽きていた。江戸末期、ペリーさんとかハリスとか来航して数年後に吉田松陰とかが死んで井伊が殺られてなんだっけ。ああ資料集開くのね、194ページ目?
194ページ目。俺はこのページに釘付けになった。ページ、というか写真二枚に。何故と聞かれても分からない。ただ何か物凄い引力か何かで引き寄せられているみたいで目が離せない。写真の真横にある矢印が彼らの名を示している。近藤勇、土方歳三。だんだん写真がぼやけてきたと思ったら目からぼたりと雫が垂れて写真を濡らした。なんだ、これ。とりあえずこのままだとやばい。

「先生、保健室、行ってきます」

泣いているのがバレないよう足早に教室を出た。保健室に全力疾走しベッドにダイブすると、枕が濡れたのが分かった。駄目だ止まらない。何でだ。こんどういさみ、ひじかたとしぞう、しんせんぐみ。なんなんだ。涙だけでもどうにか止めようと、ぎゅうと目を瞑った。


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