視界いっぱいに海が広がる。

指を動かせば、その間にふわふわとした粒を感じた。
砂だ。
どうやらふかふかの砂の上で寝ていたらしい。
それでは寝心地もいいわけだ。
それから、この日差し。
・・・冬、ではないだろう。
少し前まで感じていた突き刺さるような寒さはどこかへいってしまったようだった。
ざっぶーん、ざっぶーんと海定番の音がする。
引いていく波が私の足先十センチくらいのところにあって、これ満潮の時だったらびしょびしょだったなと空っぽの頭で考えた。

「・・・。」
本当に、からっぽだ。
もう何が何だかわからない。
窮屈で退屈で空気の悪いあの場所で突っ伏していたら海に来ましたとかもうファンタジーだ。
・・・夢なのかもしれない。
目が覚めたら、またあの場所で苦しむのかもしれない。
だとしたら、ここには私を苦しめるものは何もなくて、せめて目が覚めるまではここでからっぽでいるのも悪くないかも。
夢の中でまで圧迫されて酸素を求めるなんて馬鹿げている。
・・・そこまで考えて、起き上がっていた上半身を再び砂の山へ沈める。
正面に映るのは綺麗な青空で、やはり冬とは思えない日差しの暖かさ。
目に刺激を十分すぎるくらいにくれるから目を閉じた。
瞼の裏に明るいオレンジ色が見える。
・・・誰かわからないけれど、ここに連れてきてくれた人には感謝しなければ。
だって、こんなに心が穏やかなのはきっと随分前以来。
頬が緩むのを感じる。
ざっぶーん、を聞きながら段々と意識が遠ざかっていくのを自覚しながら、それに抗わない。
ああ、なんて気持ちのいい所なのだろう。
このまま砂の一部分になってしまいたい。
ふわふわと漂う意識のなかで、ずっと、・・・。

























「・・・。」
目が覚めると、目の前には枕。
少し固まった後、ああまたどこかに飛んだのだと理解した。
二度目だが早くも冷静な対応が出来るのは、きっとこの夢がひどく居心地がいいせいだ。
上半身を起き上がらせると自分の寝ていたところが布団なのだと気づく。
ふあ、とあくびをひとつ。
一応状況確認、とあたりを見渡す。
一応がついたのはさっきのようにいつ飛んでもおかしくないためだ。
またあくびをひとつして、何となく自分の手を見つめた。

「あ!!」
突然声がして、ぱっと手にあった視線を上にあげる。
反射的にあげてしまった視線にぶつかったのは、人の良さそうな青年だった。



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