四、響く声

今日は少し部活に遅れそうだ。
俺は溜め息をついた。
遅刻の理由は女子からの告白。
・・・やはり、俺の美貌は部内ナンバーワンだな。
他の部員はこんな理由で遅刻することはなかった。
だが正直、部活で走っている姿がカッコよかったです、という内容ならば、部活の直前に呼び出すのはやめてほしかった。
部活を、自転車に乗ることを邪魔しないでほしかった。
だって、矛盾しているだろう。
自転車に乗る姿が好きといっておきながら、それを邪魔するなんて。
自分のいっていることが嘘だといっているようなものだ。
・・・いかん、俺としたことが、愚痴になってしまった。
そんなことを考えてぼうっとするくらいなら、早く部室へ行こう。
目的地へ進む足を速め、ある角を曲がったとき、

「っ!!」
「なっ!?」
何かとぶつかった。
しかし、予想した衝撃よりも小さく、踏み留まり、相手を受け止めることができた。

「よかった。けがは、・・・なさそうだな。」
「・・・。」
「すまんな、少し焦っていて・・・!?」
相手を立たせ、その小さな背の少女の顔を覗いて、固まった。
白い頬に涙が伝う。
ぶるぶると震える肩が、信じられないほどに細かった。

「そ、そんなに痛かったのか!?」
「・・・。」
静かに、とても頼り無さげに泣く少女は、口を開かない。
ただ、その大きな瞳一杯に涙を溜めて、俯いている。

「ま、・・・まさか、俺を怖がって!?」
「・・・っ!」
「あっ!」
ショックを受けながら言った直後、腰まである茶色い髪を揺らし、少女は走っていってしまった。
それは図星ということか!?
ファンクラブまである俺が女子に怖がられたのは初めてだ。

「・・・見たことがない女子だったな。」
誰もいない放課後の廊下に、自分の声が響くのを聞いた。


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