世界は広い、と思う。
福ちゃんみたいな奴、新開、東堂・・・真波みたいな不思議チャンもいる。
だから、この世界は、広い。
「福ちゃん、悪い。忘れ物した。・・・部活まで時間あるし、とってくるわ。」
「ああ。わかった。」
部室で着替えようとした時、教室に携帯を置いてきたことを思い出した。
げ、と口に出したところ、福ちゃんがこっちを向いた、というわけだ。
部室を出て、渡り廊下を歩き、教室へ。
あんまり時間がねェな、走ろ。と焦り、教室の扉を荒く開いた。
・・・誰もいねェ。
静まり返っている教室には、物音ひとつ響かない。
いつもは騒がしい教室の別の顔に、何だか知らない所にいるような錯覚。
・・・いやいや、時間ねェんだって。
ぼけっとしてたらはじまっちまう。
自分の席へ向かい、机を覗いて・・・あ、やっぱここにあった。
携帯を手に取り、また走りだそうとした時、なにかが視界に入った。
・・・何だ?あれ。
窓の端に掛かっているカーテンの下、何かが出ている。
好奇心が沸き、近づくと、それは靴を履いていた・・・って、人間かよ!?
何だってこんなところにいるんだよ、コイツ。
いみわかんねェ。
とりあえず、誰か確認すっか、とカーテンに手を伸ばす。
シャッ
音をたてて開いた黄色のカーテンに包まれている人間は、きっと驚くだろう。
確信に近い予想をして、人がいるであろう場所に視線を下げた。
「・・・は?」
思わず、間の抜けた声が出た。
でもそんなことより、だ。
「オメェ、・・・何してんの?」
「・・・。」
俺の目には、丸まった人間が見える。
例えるなら、猫のように。
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