十二、動き出す

ついてくればァ、と言われ左右の腕を引かれて辿り着いたのは、ある建物。
その途中にも人とすれ違ったりしたのだけれど、二人はさりげなく私を隠してくれた。

「よし、お前はここで座っていろ!」
「・・・ぇ。」
「いや唐突過ぎんだろ。こんなビビりを連れてきていきなり、はいここに座っててねなんて言ったら逃げるに決まってるってこと思い付かねェのかお前は。」
「何を言う荒北!それ以外に何も思い付かんから言っているのだ!」
「もっとなんかあるだろ!?・・・例えば、・・・。」
「やはりないのだな!」
「くっそおおお!!」
二人が私についての話をしてくれていると分かったから他の人がいそうで怖いこの場所で人が来るのを警戒しながらなんとか話を聞いていた。
だけど、内容が頭に入ってこない。
頭の中を占めるのは常に怖いと言う感情。

「・・・おい?」
「む?・・・どうしたのだ?」
「・・・。」
いつの間にか私の体は震えていた。
それに気づいたのか、二人は慌て出した。

「お前が変なこと言い出すからこんなことになったじゃねェか!!」
「お、お前だって何も思い付かなかっただろう!!」
「・・・。」
「あー、んーと、えーと、・・・。」
「あああ!どうすればいいのだ!?女子に震えられるなど経験がないぞ!?」


その時。




突然足音が、聞こえた。



「・・・!?」
「「なっ!?」」
気がつけば二人の服を握りしめていて、だけどそれでも震えは止まらなくて、どうしようどうしようとその言葉だけが頭を巡る。
音が近付いてきて、止まった。
歯がガチガチと音をたてる。

怖い。


怖い怖い怖い。


怖い怖い怖い怖い怖い。








「何だ、二人とも来てたのか。おめさんたちが休むなんて珍しいなと思って・・・・・・。」
「な、なんだよ?」
「どどどうしたのだ新開?」
「・・・その子、だれだい?」
「「・・・!?」」


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