・祝!奥村兄弟誕生日






『名前、ハッピーバースデー!』


暗い食堂に入るとクラッカーが鳴らされた。
予想外の出来事に勿論名前は目を見開き、突然の事態に呆然とする。
そして仕掛け人……もとい、奥村兄弟に目を向けた。


「……何、してるの?」
「何って、お前今日誕生日だろ?」
「一年に一度しかない日だから、お祝いぐらいしないと」


イタズラが成功した子供のような笑みを浮かべる燐と、慈しむような暖かい微笑みを浮かべる雪男。
2人からの言葉に、名前はやっと誕生日の意味を理解した。

12月27日。
それは名前と、彼女の弟にとってとても大切な記念日だ。


「…今日、誕生日だったんだ」
「何だよ、忘れてたのか?」
「いつもクリスマスと合同だったから」
「あぁ、そっか、近いよね」


双子に手をそれぞれ引かれ、食堂の椅子に案内される。テーブルの上には燐が用意したのだろう、豪勢な料理が並べられている。
中には、名前の名前が書かれたケーキもあった。


「ありがとう、燐、雪男。凄く嬉しい」
「おう!」
「どういたしまして」


ふわりと嬉しそうな笑みを浮かべると、双子もつられて笑みを零した。

席に着こうと名前の元から離れようとした2人だったが、カクンと前のめりになりその場に留まった。
原因は、目の前の彼女。
座らされた席から立ち上がると、2人の首に腕を回し抱きついた。


「……それから、ハッピーバースデー」


耳元で囁かれた言葉に目を見開いた。

12月27日。
それは名前の誕生日であると共に、燐と雪男の誕生日でもあった。
パラレルワールドからやってきた、自分、そして兄と全く同じである存在。
誕生日も当然同じであった。

しばらくの間固まっていた2人だが、次第に柔らかな笑みを浮かべる。
感謝の気持ちを伝えるように、燐と雪男は名前の頬にキスを落としたのだった。











たった1夜の奇跡に、祝福を。
(ありがとう、生まれてくれて)
(2人に出会えたことこそ最高のプレゼント!)



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