・エース再会前




青い空、白い雲。
グランドラインを行く船は、波に揺られて日々前進。


「サーンジー!腹減ったァー!!」
「馬鹿言え、さっきメシ食ったばっかだろ!」
「サーンージー!!」
「うるさいわよ!!ちょっとは静かに出来ないの!?」


「…うるさいなぁ…誰よ、あたしの眠りの邪魔するのは」


船の主・名前は甲板から起き上がると、声のする方へ顔を向けた。
視線の先には小さな1隻の海賊船。
…否、距離があるため小さく見える海賊船。


「何あれ…あそこから聞こえてるっていうの?」
「そのようだな」
「うっそ信じらんない!どんな馬鹿騒ぎをしてるのよ、それとも襲われてるの?」
「いや…ただの会話のようだが」
「何それ…どこの海賊よ」


シリウスの言葉に呆れながら、すう、と息を吸い込みはじめる。
その様子に気付いたシリウスは耳を塞いだ。


「コラァァァァ!!そこっうるッさいんだよ!!あたしの航海の邪魔するなァッ!!」


海賊たちに負けず劣らずの声量で叫ぶ名前。
しかし海賊船は聞こえているのかいないのか、騒ぎが収まることはない。


「…腹立つなァ、誰だよ船長」
「はじめて見る船だ…新人か?」
「どっちにしろ、あたしは船長をぶっ飛ばす…せっかくの睡眠を奪いやがって…」


シリウス!と相棒に声をかける。
相棒は溜息を一つ吐くと、海に飛び込み……その姿をイルカへと変えた。
イルカの背に名前は飛び乗ると、海賊船――ゴーイングメリー号へ向かった。





*****

「サァーンジィー!メシィィー!!」
「だァーっから、食ったばっかだっつってんだろ!!」
「でもォー!!」
「いい加減にしなさいッうるさいって何度言わせりゃいいのよ!!」


ナミの鉄拳を食らい、大人しくなったルフィ。
未だにふてくされてはいるが、しぶしぶ納得したようだ。


「本当によく食べるんですね…」
「いや、感心する所じゃねぇだろ」


ビビの言葉に突っ込むウソップ。
その様子を傍観していたゾロは、ふと波音に紛れ何かが近付く音に気付いた。
海に目を向け、じっと睨みつける。


「…どうしたの、ゾロ?」
「何か来る…」


ゾロの言葉にナミも海を見た。
遥か先に一隻の船…その手前には「何か」が此方へ向かってくる姿が見える。
その「何か」はどんどん近付き、不意に宙を舞った。

そして……ゴーイングメリー号の船首に飛び乗った。

その異常にクルーたちはやっと騒ぎをおさめ、張り詰めた空気が船を包み込んだ。
――ただ一人、船長を除いて。


「ん?何だお前、どっから来たんだ?」
「どうみても敵襲でしょ!?」
「ゴチャゴチャうるさいんだよ、お前ら…人の安眠を妨害しやがって…」


ゆらり、その場から看板へ飛び降りる。
決して高くない身長の相手だというのに、まるで巨人族の猛者と敵対しているような威圧感。
赤いバンダナの下から覗く瞳が怪しく光る。
生唾を飲み込む音が何処からか聞こえた。


「誰だよ、此処の船長は」
「……おれだ」


ルフィが一歩歩み出す。
敵は真っ直ぐに視線を向け――表情を一気に緩ませた。


「……え、ルフィ?」


ぱちくりと瞬く瞳に敵意はない。
むしろ、懐かしむような喜んでいるような眼差しにさえ見えてくる。
敵の急変っぷりに、クルーたちは呆然とするしかなかった。

一方、名を呼ばれたルフィは首を盛大に傾げていた。


「ん?何でおれの名前知ってんだ?」
「ルフィ、知り合いじゃないの?」
「んー…なーんか見たことあるような…」


じっと相手の顔を見つめる。
しばらくして、とある単語が彼の頭を横切った。


「……ねー、ちゃん?」
「え、」
「は、」
「ねーちゃんだとォォォオ!?」


ウソップの叫び声に敵……名前は笑みを輝かせた。


「久しぶりね、ルフィ!」
「ねーちゃん!!」


姉に抱きつくまで、あと3秒。










ハロー、マイブラザー
(ねーちゃんだ!おれの、ねーちゃんだ!!)
(ルフィ!あんた海に出てたのね!)



*



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