紅の幻影ss | ナノ


夏も終わりの今日この頃  




「何してんの?」
「夏休みの宿題です」
「で、何してんの?」
「だから、夏休みの宿題です」
「……。」
「……?」

見てわかりませんか?と粘土を弄くるおチビちゃん。軽く溜め息でも聞こえてきそうなほど呆れを含んだその声はホント可愛げがない。

さっきまで気絶してたと思ったら(気絶させたのは勿論、僕だけど)、突然起き出して粘土を買ってきて欲しいとお願いするもんだから、思わず素直に百均に行ってしまった。

で、僕から粘土を受け取ると苦虫を噛み潰したが如くとても嫌そうに小さな声でお礼の言葉をのどの奥から絞り出したあと、おチビちゃんは粘土を弄くり始めた。

そして、冒頭の会話ってわけ。


「……それ、なに?」
「貯金箱」
「なんの貯金箱?」
「ネコ型ロボットです」

ああ、この前やってたアニメね。知ってる知ってる。でもさ、お願いだからもう一度聞かせて欲しい。

「それ、なに?」
「……」

だから、ドラ○もんです。とおチビちゃんが両手で掲げて見せてきたソレは、よくてキメラ、正直生物かどうかすら怪しい土の塊だった。

青色だから顔色が悪すぎる。ていうか、なんで顔面にまで絵の具塗ってんのさ。そこ白じゃなかった?
あと、ヒゲ?そのミミズなみの太さの黒い線はヒゲのつもり?ポケットもとれかけてるじゃん。たまにポケット取られてるけど、なに?それを再現してんの?

「そもそも…」
「……?」
「なんで夏休みの宿題を今やってるのさ?」

そう尋ねれば、おチビちゃんは気まずそうに目線を逸らした。あ、忘れてたんだ。忘れてて、小学校の先生に怒られたんだ。バカだねー、ほんと。

そもそも貯金箱出来たのはいいけど、その傷だらけ(これも僕がやった)の体でいつ学校に行くの?やめてくれない?絶対、虐待疑惑で(実際、間違ってない)担任の家庭訪問とか児童相談所とか来るじゃん。一応、親として登録してるの僕なんだから。めどくさい。

「……宿題それで終わり?」
「はい。」
「じゃあ、こっち来て」
「…なんですか?」
「手当てするから」
「はい?」
「ほら、早く腕出して。服脱いで」
「ちょ、やめっ…っ!」

全力で抵抗する小さな体を無理やりベットに放り投げて救急箱からマキ○ンとガーゼを取り出し、傷口にかかるたびに小さく体をビクつかせるおチビちゃんの手当てをしていく。

「ぃっ…、自分でできます」
「遅いんだよ、僕がやった方が早い」
「…なに企んでいるんですか?」
「余計な家庭訪問は嫌だから」
「…?」
「はいはい、次、足見せて」

眉間にシワを刻みながらおチビちゃんは僕を見つめる。足に包帯を巻きながら視線に無視を決め込むと、痺れを切らせたのかおチビちゃんは溜め息を零した。

「なんの意図があるのか知りませんが…」
「……」
「あなたを殺す相手の手当てをしたこと」
「……」
「いつか死ぬほど後悔させてあげます」

ふん、と手当てしてもらいながら口をへの字に曲げる『クソガキ』。一生無理だよと嘲笑ってやれば、悔しそうに大きな瞳が睨んできた。


ホント、愚かで愉しい僕の玩具だね。

いつか、ちゃんと殺しにきてよ?
返り討ちにしてあげるからさ。

僕のお人形…───



─*─*─*─*─

以前、拍手お礼として載せていた文章です。
いつのだよ?と見て、書いた日付見たら2014年になってて笑いました。

時間軸として、小学生時代ですね(^ω^)
Marchと出会う前です。

なんやかんやありますが、保護者がエンヴィーとかウケる。



2017.01.28 いろは遊



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