紅の幻影ss | ナノ


愛玩  




暖かな午後の日差しが差し込む、宿の一室。
エドとアルは賢者石の情報をもらうため東方司令部へと行ってしまった。しかし、数時間経っても帰ってこないあたり、大佐に嫌みを言われているか図書館にでも行っているのだろう。
静かな部屋で一人、特にする事もなかった私は目の前の整えられたベッドの誘惑に打ち勝つ事が出来なかった。

──スル……バフッ

重いコートを脱いでベッドへと沈むと途端に開放感が私を包み、その微睡みに酔いしれながら私の意識は薄れていく……はずだった。

──ガチャガチャッ…バキンッ
「リトー?あれ、お昼寝中?」

飄々とした口振りで窓からやって来た招かれざる客。と言うか窓の鍵壊しましたよね?
そんな事は彼、エンヴィーにとっては日常茶飯のようで、エンヴィーは何の躊躇いもなくベッドの方へ近づいて来た。

──ギシッ
二人分の体重に悲鳴を上げるベッド。エンヴィーの気配がすぐ側で感じる。

「……このまま犯してあげようか?」

さっきよりも確実に近くなったエンヴィーとの距離。

「起きないんなら本当に悪戯しちゃうよ?リト…」
──チャキ
「それ以上近づくと殺しますよ?」

ぶつかり合う紫と紅の視線。私は枕の下に入れておいた拳銃を上にいるエンヴィーの喉元に突き当てた。

「なーんだ、起きてたの?」
「あなたの気配で目が覚めました」

子供の頃からの習慣なのだろうか。ホムンクルス……とりわけエンヴィーの気配には敏感になってしまった。しかし、いくら冷めた口調で銃口を向けても、エンヴィーは退く気配を見せない。

「……降りてくれませんか?」
「あ、寝ぐせついてる」
「……重いんですけど…」
「あれ?シャンプー変えた?」
「邪魔です、どいて下さい」
「いい匂いだね。それに前のよりサラサラしてる…」

そう言ってニコニコと私の髪を手でとかす。
噛み合わない会話、そして自分を殺したがってる相手に平気でベタベタするエンヴィーに私のイライラは次第に募っていった。

「エンヴィー……いい加減に………っ!?」

目を閉じて息を吸い込み、溜めた怒りを一気に爆発させようとしたが、それはあえなく不発に終わった。
カッと目を開けた瞬間に飛び込んできたのは、至近距離にあるエンヴィーの顔。思わず銃を持つ手が緩んだ。

「っ……エンヴィー…?」

おどけた様子でもなく、人間を見下した顔でもなく、いつになく真面目な顔でジッと私を見るエンヴィー。

「ねぇ……リト…」
「なっ何ですか…?」
「……乱れた制服ってなんかソソるね」
「……はぁ?」

何訳の分からない事を言っているのだろうか、全くもって理解不能だ。

「…この…っ、さっさと降りて下さい!」

いい加減、この体勢も疲れてきた私は両手を合わせて武器を錬成しようとした。だが、それよりも早くエンヴィーが私の両手首を掴み押さえつける。

「なにすっ……ッ!?」

声が出せない。重なる唇、私とエンヴィーとの距離はゼロだった。

「…んぅっ!っ…はっ……んゃあ…!」

呼吸がしたくて僅かに口を開ければ、その瞬間を狙っていたかのように、スルリと侵入してくるエンヴィーの舌。狭い口内でいつまでも逃げ切れるはずもなく、私の舌は簡単に捕まり絡めとられる。

──クチュ、クチュ
「ん、ゃっ、やぁ…はっ」

ダメ……頭がボーッとする…。
エンヴィーに与えられる不純な刺激と卑猥な音。そして上手く酸素が回らない事が重なり、私の抵抗は小さくなっていく。それを見たエンヴィーは満足げに唇を離した。

「はぁ……はぁ……っ」
「あはっ、本当にリトってキスに弱いよね」

力の入らない体で必死に新鮮な空気を体内に取り込む私。かたや私と違って息一つ乱れていないエンヴィー。
彼は楽しそうに私の服に手をかけ、プツプツとシャツのボタンを外していった。

「っ…調子に乗らないで下さい!」
──ドカッ
「いっ……!!」

全身に散った力を右足に集中させ、エンヴィーの腹部を思い切り蹴り飛ばした。ベッドの下で腹部を押さえてうずくまるエンヴィーを一瞥し、私もベッドから降りると乱された制服を直す。
ビシッと制服を着直し、コートに手をかけた刹那……───ドクン!

「え………っ?」
──ドクン……ドクン…ッ
「なっ……あ……っ!」

体が熱い、呼吸が荒くなる。明らかに異常だ。

「エンヴィー……何を…っ」
「よく効くでしょ?コレ」

さっきキスした時に流し込んだんだけど、リトったらキスに夢中で気づかないんだもん、とエンヴィーは笑い空になった小さな瓶を翳す。
それが何なのか分からない私にエンヴィーはそっと近づき、耳元で囁いた。

「…これは媚薬。この“世界”特有のね」

媚薬……惚れ薬とも言ったりするが、エンヴィーの様子とこの症状を見る限り催淫剤で間違いないだろう。最悪だ。
初期段階でもこの効き目、薬が完全にまわったらと考えただけでも恐ろしい。とにかく、エンヴィーから離れなければ、なにをされるかなんて考えたくもない。

部屋から出るために私は覚束ない足取りで走り、ドアのノブに手をかけるが…

「ダーメ。」

後ろから伸びた手が私を抱きしめるように捕らえ、唯一の逃げ道であった扉に鍵をかけた。

──ガチャン
その音はまるで絶望への序曲。

エンヴィーは私を軽々と抱き上げるとベッドに寝かせ、私の上に覆い被さった。

「悶えるんだったら僕の下で悶えてよ」
「ぃやっ……やめてください…ぁあっ」

エンヴィーがねっとりと首筋を舐めただけで、敏感に反応してしまう。おかしい……こんなのおかしいです!不純な事されてるのに、もどかしいだなんて…。

──プチプチ
「何、するんですか……っ」
「だって暑そうなんだもん」
「やっ…やめ……ッ」

シャツのボタンは全て外され、スカートもめくれて意味を成さない。

「やっぱり白か。白い肌に白い下着って、リトらしいね」

涙目になりながら必死でシャツを握りしめて隠そうとする私をよそに、エンヴィーは太ももを上へと撫で上げる。

「いっ……やああああっ」
「僕が黒ならリトは白だね」

エンヴィーの視線にすら感じるカラダは益々熱を帯ていった。

「んっ……は、あっ……ッ」
「辛そうだねリト、かわいそう…」

言葉とは裏腹に愉しそうな声で笑い、エンヴィーはプツンとブラのホックを外した。そして、頂きには決して触れず、優しく焦らすように胸を揉みしだく。

「いやっ、ふあぁッ…あっ」
「体型に似合わずやらしい声」
「うるさいで…す……やぁああっ」
「エロい顔してさぁ、誘ってんの?」

違う……誘ってなんかない!そう言いたいのに言葉の全てが淫らな喘ぎ声に変わる。

「やっ……ァアッ……んぁっ」

瞳からは生理的な涙が流れ、僅かばかり残った理性が見せる抵抗なんて…

「下着……染みてきてるね?」

クスクス
エンヴィーの声と視線の前では無力に等しい。
もう……無理。体が熱くて正常な判断ができない。

「……エンヴィー」
「なーに?」

ニヤニヤと私を見下ろす。
嫌だ、負けたくない。エンヴィーの思い通りになんてなりたくない。でも……っ

「もっ……無理、なんです……っ」

私の顔にかかったエンヴィーの長い前髪を掴んで願い乞う。けれど、エンヴィーは満足しない。

「もっと具体的に“おねだり”してみてよ?」
「ひゃっ…んぁ!」

感じると分かっていながら耳元で囁き、ペロッと舐めた。

「ぐ…具体的……に?」
「そう。例えばリトのどこを、どうしてほしいのか……ね?」

ツゥ───……
「っゃああああッ、はぁ…っ」

エンヴィーは私のまともに身につける唯一の布を、下から上に何度も撫でる。時折、私の反応を楽しむかのように強弱をつけて撫でては、私の反応にうっとりと酔いしれたような眼差しを向けてくる。

「んは、…あっ……やらぁッっ」
「ね?早くおねだりしてごらん?辛いでしょ?」

せかすようなエンヴィー。そんな顔されって分からない。何て言ったらいいのか、どうやっておねだりしたらいいのか………わかんないよ…っ!

「エンヴィー…、お願いします……体が熱くて、変になりそうなんです……っ」

精一杯、エンヴィーに手を伸ばして願い乞う。

「たす…けて、下さい……ッ」

エンヴィーに助けを求めるなんて屈辱以外の何物でもない。それでも私の体はそれ以上にエンヴィーを欲している。

「っう……ヒクッ……っ」

悔しくて、恥ずかしくて、もどかしくて。いろんな感情が涙となって頬を伝った。そんな、いっぱいいっぱいの私をエンヴィーは余裕の笑みで見下ろす。

「仕方ないなー、今回はそれで許してあげるよ」

恩着せがましく、しかも上から目線で私との立場の違いを明確にさせながら、エンヴィーは私の涙を拭った。

「リトって、こういう事はしたことないんだね」

当たり前だ、こんな……不純な行為…。

「じゃあさ、言葉も知らないんじゃないの?」
「こと…ば……?」
「そうそう。例えば、こことか…」
「っ!やあぁあっ!」

エンヴィーは私の両足首を掴んで左右に開かせると、その中心部を指差した。
今の私のそこを包むのは薄いショーツ一枚。こんな格好……たえられない…っ!

「ねぇ?知ってる?」
「やっ!離して、下さい…ッ」
「ちゃんと答えれたら離してあげるよ」

……そんなところの呼び方なんて知らない。媚薬に冒され、回らない頭で必死に考えていると

──トプッ
「っ……んああぁッ」

エンヴィーがショーツの上から指を私の中に入れた。初めて体の中に異物が入る感覚に半ばパニックになる私。

「やっ……エンヴィーっ、何して…ぁあッ」
「リトが遅いからでしょ?あはっ…ヌルヌルしてて抵抗なしで下着が入っちゃう」

乾いた笑みを浮かべ、何度も何度も抜き挿しを繰り返す。

──クチャ…クチュ…
「ぐっちゃぐちゃ、恥ずかしくないの?」
「やあっ……違っ…!」
「違わないでしょ。愛液が下着に染み込んでるし。そんなに気持ちいい?」

違う違うと首を振る私に、エンヴィーは更に羞恥心を煽る言葉を突きつける。

「敵に犯されて悦ぶなんてさあ、一番不純なのはリトなんじゃないの?」
「なっ…あぁッ!」
「まぁ、ここまで感じやすいと不純って言うより……淫乱だね、淫乱」

クスクス

「違う」と言えばエンヴィーは「説得力ないよ」と鼻で笑い、私の中に入れた指先を震えさせた。

「んあッ…はっ……ゃあぁァッ」
「あはっ…感じすぎ。よかったね、気持ちよくって。リトったら本当に淫乱なんだから」

違うのに……媚薬の所為なのに。私は淫乱なんかじゃないのに……。そう言いたくても言葉にならない。
今の私には、ただただ鳴くことしかできなかった。

「下着も意味ないね、濡れすぎて気持ち悪いでしょ?」

慣れた手つきで下着を抜き取るエンヴィーを止めようともしない私のカラダ………いや、心…。

──スルッ
「うわぁ……ぐちゃぐちゃに濡れてる」
「っつ……んは、ぁああ…ッ」

ゆるゆると愛液を指にからみつけるようにエンヴィーは秘部を弄った。

「……ねぇリト、苦しい?もどかしい?」

聞かなくても分かってるくせに…。頷いた私を見ても指の動きは緩めない。それどころか指を鋭い角度で、愛液の溢れ出す中に入れた。

「あっやああああっ……んあぁ!」
「クスッ……いい顔♪」

媚薬の所為で極限まで敏感になった体は簡単にのぼりつめる。しかし、もう少しで何かがはじけそうな時、エンヴィーはピタッと指の動きを止めた。

「はっ…あッ……何…で…」
「何その物欲しそうな顔。あぁ、ごめんごめん。そんなにイキたかった?……でも、まだダメだよ」

エンヴィーは口角を上げ、指の動きを再開する。

「んぁっ、やっ……えん、う゛ぃ……ぁあ!」
「だから、そんな目で見てもダメだってば。リトの言葉でいいから、淫乱だって認めておねだりしてごらん?そしたらイカせてやるよ」

つまり、おねだりするまでイカせてくれる気はないらしい。

──グチュッ……クチャ
「んっ……はぁッああ…っ」

ギリギリまで快楽を与え、私の限界の半歩手前で動きを止める。それを十数回繰り返されたら、誰だって頭がどうにかなってしまう。

「…っ……エンヴィー…ッ」

クスクス
何度も見てきた、私を見下すエンヴィーの笑み。今はそれすら私のカラダを震わせる。

「わたしは……リトは…いっ、淫乱…です……ッ」
「そうだね。濡れ濡れで愛液垂れ流してるし。あーあ、シーツまで染みてるよ。お漏らししたみたい」
「……っ」

そんな事、言わなくてもいいのに。きっとエンヴィーは私が恥ずかしがるのを分かってて言葉を選んでいる。
私が言葉につまっていると、エンヴィーはトロトロとした蜜がついた指を私に見せつけるように舐め…、

「続きは?」

と催促する。

「ッ…だから、淫乱なリトを……」
「淫乱なリトを…何?」

──クチュッ…クチュッ

「んあぁっ、あっ、お願いイカせて下さいぃ…っ!」
「まぁ、ギリギリ合格かな?」

──トプッ

「んっ…はあああぁぁあッ」

私が言い終えるや否や、エンヴィーは何の躊躇いもなく二本の指を突き挿し激しくかき混ぜた。
愛液で満たされたそこは、待ち望んでいた刺激を離すまいとでも言うかのように収縮する。

そんなに欲しかったの?と笑うエンヴィーすら気にする余裕などない。

──ぐちゅっ…ぐちゃ
「聞こえる?このヤらしい音。クリトリスも触ってほしそうにはれてるね」
「んあ、はぁっ……やぁッ」

生まれて初めて感じる強い刺激。
気がつけばエンヴィーの首に手を回し、抱きついていた。

「……いいよ、いっぱいイカせてあげる」

エンヴィーは優しく口づけをすると無防備な胸の頂の片方をぎゅっと摘み、もう片方を口に含んでねっとりとした舌で包んだ。

「あッあぁあああっ…やだっ…んやぁ!」

新しい刺激に涙がまた頬を伝う。そんな私を恍惚とした表情で眺めるエンヴィー。

──ぐちゃ、ぐちゃ
──チュッ……ピチャッ…

「えんう゛ぃッ、ぁああっ…も、無理……ぃッ」
「何が無理なのさ?ほら?」
「ぁあ!っ……ぃ、イっちゃう……ぁああッ!」

抱きつきながらそう言うと、エンヴィーはニヤリと笑い…

「イキなよ、ちゃんと見ててあげる」

中指で膣内を擦りながら、赤くなったクリトリスを親指で弄った。

「んあああっ、ぅあぁぁあ…ッ!」
「いいねー、その顔。ゾクゾクする」

向けられた眼差しがひどく妖艶で、それ自体が一番の媚薬。エンヴィーは中をかき混ぜる指をいっそう激しくした。

──グチュッ、ぐちゃっ
「あっ…エンヴィーッ……ふっああぁ!」
「可愛いよ、リト」
「ひっ……ぁああああああッ!!」

───ビクン!──………

私の意識はそこではじけた。





(エンヴィーside)

スー……スー……

「……ちょっと、やりすぎちゃったかな…?」

一回イッただけで気を失ったリト。
まぁ、初めてなのに媚薬使って、しかもさんざん焦らしたんだから仕方ないか。本当はここまで虐めるつもりじゃなかったんだけど…

「エンヴィー…ッ、お願いします……体が熱くて、変になりそうなんです……っ」
「たす…けて、下さい……ッ」


リトが悪いんだからね?あんな可愛い表情で、あんな可愛い事言うんだから。自業自得でしょ?

眠るリトの体にソッと毛布をかけ、触れるだけのキスをする。

「……覚悟してよね?今度は最後までヤらせてもらうから」

逃げようとしてもムダだよ。気絶なんてさせてやらない。どんな抵抗の言葉だっておねだりに変えさせてあげる。

「ね?リト……──」



2009.06.01 いろは遊



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