(千尋side)
「……明くーん?ちょっとおいで?」
喜色満面の笑みで明を手招きする美香。明は『げっ』という効果音を背後に浮かべ、少しばかりの抵抗を見せたが、無理ですわね。だって、美香の方がいろんな意味で強いんですもの。
ほら、そうこうしている間にズルズルとどこかへ引き摺られていきましたわ。御愁傷様。
「点呼終わりました……あれ?綾瀬さん達は?」
「たぶん御手洗いですわよ」
「……二人で?」
「ええ、双子ですから、フフ」
ふーんと、妙に納得しているこの子は何て可愛いのかしら。妹がいたらきっとこんな感じなのだと思うと、一人暮らしをしているらしい理冬を本気で養子に迎え入れたくなる。
「そろそろバスに乗る時間…って先生が…」
「あら、本当ですわね」
美香の代わりに自分の班の点呼をとり終えた理冬は律儀に美香を呼びに来た様子。
「「おまたせ」」
タイミングよく戻って来た双子。
「なんや、えらい遅かったな?う○こか?」
空気の読めない隼斗。
「レディに向かって何てこと聞くのよ!」
と、美香に叩かれ。
「はぁ、一言多いんだよ…」
と、明に呆れられている。
美香と明……ふふ、そう言う事ですのね。
面白そうなことをしている双子に隼斗も気づいたようで、チラリと横目で見てきたから私は静かに首を横に振った。ダメですわよ、まだ言ってはいけない。
──ピーピー
担任の腕時計から聞こえた機械音。集合時間に設定していたアラーム音が鳴り、それぞれが自分のクラスの担任の指示のもと、バスへと乗り込んでいく。
「よし、俺達も行くか」
「そうね」
「じゃあ、理冬また後で…」
と、後ろ手にヒラヒラと振った明の手を…
──パシ…
彼女は掴んで、こう言った。
「ねぇ、どこ行くの?」
「「……!?」」
「あなたのクラスはこっちでしょう?」
驚く双子。いいえ、私と隼斗でさえ息を飲んだ。
だって普通は気づかないことだから。服を交換し、お互いの口調を真似た明と美香は、両親ですら見分けがつかないそうですわ。現に私と隼斗だって見分けられるようになるまで、随分と時間がかかりましたもの。それを、この数週間で……?
驚きすぎて、未だ放心状態の明……の格好をした美香の袖を引っ張り、彼女は柔らかな笑みを浮かべた。
「さあ、早く行こう?美香」
君に二度目の恋をした
(美香!お前いい加減、服返せよ!!)
(あら、いいじゃない今日ぐらい)
(お前なぁ…っ)
(さ!行くわよ、リト!)
(え……明は…?)
(いいの、いいの♪)
(美香ぁあああ!!)
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中学の時は体型も
あんまし変わらない双子。笑