(隼斗side)
集合時間の30分前、明の携帯に美香の携帯から電話があった。
【……迎えに来て下さい】
電話越しに聞こえた声は美香よりちょっと高い、あいつの声。なんで美香は自分でかけてこないんやろう?と疑問に思ったが、誰もあえてそこは触れずに美香たちの分のリュックも持ってオレたちは向かった。
言われた場所にオレと千尋と明の三人で行ってみると、ルートから大きく外れた人気のない空き地で理冬に膝枕してもらいながらスヤスヤと気持ち良さそうに眠る美香がおった。
何があったんか聞いてみると、二人でトイレ行った後迷子になって。しかも美香が転んで頭打って気絶したらしい。
「…なんや、そうやったんかいな!」
「……ったく、心配したんだぞ」
「……すみません」
「…まぁ無事でなによりですわ」
……珍しいなぁ、あの美香が受け身をとり損ねるなんて明日は雨とちゃうか?…って思ったんやけど、何となくこれ以上聞いたらあかんような気がした。
まるで、そのことには触れたらあかんような、氷みたいな雰囲気を理冬が出してたから、俺も明も千尋も深くは聞かんかった。
帰りは明が美香をおんぶして、先生が決めた集合場所に戻ってきたオレ達。戻る途中も着いてからも、理冬はずっと黙ったまま。
せやけど最後に美香の頬っぺたに手ぇ置いて、
「……ごめんなさい」
なんや真面目な顔して呟いてから、寝てる班長(美香)の代わりに担任の所へ点呼とりに行ってしもた。
「……何があったんだよ?」
理冬が完全にいなくなったところで明がボソッと言う。
「………」
「おい寝たふりすんな、バレてんだよ」
明が首だけを回して後ろを見れば、美香の目がうっすらと開いた。なんや起きとったんかいな。
「最近の明、可愛くない…」
「悪かったな、お姉ちゃん」
つか、起きてんなら自分で歩けっつーの、と明はブツブツ言いながら美香をおろした。
「……で?」
明はもう一回美香に聞いた。せやけど美香は首を45度ぐらいに傾けて眉間に皺を寄せる。
「覚えてない…」
「「「…は?」」」
「まったく覚えてないの!!」
ああぁ゛〜!と、両手で頭を押さえながら項垂れる美香は、正直他人のふりしたいくらい目立ってた。鹿もドン引きして近寄って来ぇへん。
「なんで!?え!?二人でトイレに行って、抱き締めて!それから、追いかけて……あ゛〜!ダメ!そこで記憶がプッツンしてるぅうう〜!!」
そのまま美香は暫く悶えとった。
基本的に似てない双子
(……お前、弟やろ。止めたれや)
(弟と思われたくねえよ)
(あらあら、美香ったら…)
(あぁぁああああ゛!!)
(思い出せないのが余程悔しいんですわね)
(なあ、明…)
(……俺は知らん)