『如月の夢』の続きです\(^o^)/
では、どーぞ。↓
2月14日 曇り後、晴れ
ドゴーンッ!!!
っ……何だ?!
わからない、でも厨房の方から聞こえたよ!
とにかく、行くぞ!アル!
うん、兄さん!
(軍の厨房にて)
爆破され、見るも無残な軍の食堂。
奥の厨房からは黒煙が立ち上っている。
──…!ひでぇ…、
エドは口元を押さえながら辺りを見渡した。
めちゃくちゃだ…。一体誰がこんなことを!
………って、ボクもうなんとなく予想が着いたよ
……ああ、オレもだ…
煙の向こうに揺れる人影。二人はげんなりとそちらを見た。
──ザッ
黒煙の中から現れた人物は二人の予想を裏切ることなく…
コホッ…コホッ……、
銀髪に煤をつけ、涙目になりながらいつかと同じ台詞を言う。
……失敗しました…。
ふ………っふざけんなぁああああ!!
つい先日、建て直されたばかりの厨房。いったいこの少女は厨房に何か恨みでもあるのか?エドは血管を浮かび上がらせながらリトに訊いた。
またお前かよ!今度は何してたんだよ!ストレスでも溜まってんのか!?
………
リトは黙って皿を差し出す。
やや焼け焦げた器に盛られているのは…
──ゴポッ…ゴポゴポッ…
異臭漂う物体α。黒くおぞましく、見た感じドス黒い溶岩だ。
……ちなみに、何て名前の食べ物?
チョコレートです
へー……、チョコね。これが噂に名高いチョコレートかー。作るのに必要なのは試験管とビーカー、アルコールランプとかか?
………
アルコールランプじゃ火力が足りないでしょ。ガスバーナーじゃないかな?
………
おー、そうだな。……で?この物体αはどうするんだ?誰かを毒殺するのか?
………
………プチッ
バキッ! ガィンッ!
静かになった食堂内。瀕死のエドと鎧の頭がヘコんだアル。
あの暴力女……っ
痛くないけど怖かったな……師匠といい勝負だよ。
なんであいつはあんなに機嫌悪いんだよ!
エドはチラリと物体αを見た。
──ゴポッ…ゴポゴポッ…
これは体内に取り込んでいいものじゃない、と生物としての本能が訴えている。
いきなりチョコ作りなんてどうしたんだろうね?
今日は誰かの誕生日でもなければ何かの記念日でもないはずだけど…と、二人が首を傾げていると…
──……おや?生きているかね、鋼の?
あ、マスタング大佐!こんにちは
扉の吹っ飛んだ入り口からヒョッコリと顔を覗かせたロイ・マスタング。
どういう意味だよ!言っとくけどなあ、これ(厨房爆破)はオレがやったんじゃ…
犯人はアイツだよ、とエドは言う。
しかし、ロイは何を言っているんだと眉をひそめた。
だから、聞いたんだ。『生きているかね?』と…
ドロッとした物体αを人差し指ですくい…
食べたのだろう?リトの手作りチョコレート
ニヤリと笑う。
……が、チョコをすくった指が紫黒く変色し始めたので、慌てて水道水で流した。やはりチョコ風味の毒物かもしれない。
だからどういう意味だよ?
なんでリトはチョコなんて作ってたんだ?
今日は何かの記念日ですか?
疲れたようにため息をつくエドと、頭に?を浮かべキョトンとするアル。そんな彼らとは対に冷や汗が頬を伝うロイ。
兄のエドワードは折り紙付きの鈍感だと知っていたが、まさかアルフォンスまでこうも乙女心を理解していないとは……いや、相手がリトだからこそか…。
ロイは苦笑いとため息を同時に零した。
世間一般では今日を何の日と呼ぶか知っているかね?
2月14日
……わかるかね?アルフォンス?
オレは無視かよ
えーっと……
アルは短く『あ。』と言った後、鎧をガタガタと震わせた。
にっ、兄さん!今日はバレンタインデーだよ!!
バレン…タイン……?
あーーーーッ!!
……やっと分かったかね?
思い出した途端、慌てふためく鈍感ブラザーズ。
ロイはやれやれと首を振る。
彼女なら仮眠室を独占しているよ
早く姫の機嫌を直してこい、でないと他の軍人が怯えて休めない………と、ロイが言い終わる前に疾風の如く飛んでいったエドとアル。
まあ、ビンタぐらいで済むだろう……
少し若さが羨ましいだなんて思ってしまうロイだったが、それも大人の特権なのだとしみじみ頷き、溜め込んだ書類を片すべく、怖い副官の待つ執務室へと戻って行った。
ほろ苦いぐらいがちょうど良い
(ところで中尉。修理費なんだが…)
(大佐が自腹きって下さいね)
(……経費で落とせんかね?)
(厨房を使う許可を出されたのは大佐です)
(……はぁ、不用意に出すんじゃなかった)
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