拍手御礼ページに載せていた小話です\(^o^)/
では、どーぞ。↓
2月3日 晴れ
ドゴーンッ!!!
っ……何だ?!
わからない、でも厨房の方から聞こえたよ!
とにかく、行くぞ!アル!
うん、兄さん!
(軍の厨房にて)
──…!ひでぇ…、
エドは口元を押さえながら辺りを見渡した。
めちゃくちゃだ…。一体誰がこんなことを!
爆破され、見るも無残な軍の食堂。
奥の厨房からはもくもくと黒煙が立ち上っている。
──…と、煙の向こうに揺れる人影。
二人は目をひそめて警戒しながらそちらを見た。
厨房を爆破した敵か?それとも味方の軍人か?
──ザッ
……なっ、
お前……どうして!
黒煙の中から現れた人物は……犯人であり、仲間だった。
コホッ…コホッ……、
銀髪に煤をつけ涙目になりながら少女は言う。
失敗しました…。
ふ………っ、ふざけんなぁああああ!!
あの緊張はなんだったのか?
久々のシリアスムードなのに10秒とて保たなかった。エドは血管を浮かび上がらせて犯人に問う。
朝から姿が見えねぇと思ったら、一体こんなトコで何してたんだよ!厨房なんてお前に不釣り合いな場所ナンバーワンだろーが!
失礼ですね。だいたい、厨房ですることといえば一つしかありません
科学実験?
毒物生産?
料理です!
白い指が差した先にはひび割れた皿に盛られた…
──プスッ…プスプス…
焼け焦げた物体X。
ちなみに何て名前の食べ物?
たまご焼きです
お前の国では真っ黒な物体をたまご焼きって呼ぶのか?消化管に厳しすぎるだろ!そもそも、自分が料理下手くそなのいい加減認めやがれ!!つーか、下手ってレベルじゃねー!
作る過程で厨房全壊。食堂及び、廊下半壊。おまけに食った後は食中毒以上の危険性。これで料理と言い張るお前がある意味すげー羨ましいぜ!!
………プチッ
──バキッ
静かになった食堂内。
瀕死のエドと、毎度のことに溜め息すら出ないアル。
あの暴力女……っ
今のは兄さんが悪い。無言でかかと落としはそうとう怒ってる証拠だよ?
……仕方ねーだろ、言っちまったもんはどうにもなんねーよ…
エドはチラリと物体Xを見た。
──プスッ…プスプス…
異臭を放つ毒物…いや、たまご焼か。
にしてもだ。あいつは何で
こんな大量にたまご焼き作ったんだ?
厨房の奥のテーブルに置かれた無数の皿、皿、皿。そのどれにも物体Xが鎮座している。
え?兄さん……、まさか本当に気づいてないの…?
ん?何が?
はぁ……と、ここに来てやっとアルは溜め息が出た。鈍いにもほどがある。
今日は何の日?
今日?あ〜…、『師匠に半殺しにされた数100回記念日』
何その嫌な記念日……。違うだろ、もっと大切な日だよ!今日は兄さんの……───
“誕生日じゃないか!”
言われて初めて気づいた己の生まれた日。
そして気づいたことがもう一つ。
じゃあ、この物体X(たまご焼き)は……
誕生日プレゼント用に何回も作り直したんじゃない?じゃなきゃ、いくら好きでもこんなに作らないよ
アイツ……
使い慣れていない料理器具を前に苦戦する彼女が目に浮かぶ。
出来るだけ美味しいのをあげたい、と頭から煤を被り、指が絆創膏だらけになっても一生懸命作った物体X。
アル……捜しに行くぞ
たまご焼きも持っていかなきゃね
う……っ
アルに言われてエドはたまご焼きを一口食べた。苦いのにしょっぱい。半生のぐちゃりとした触感の中に砕けた卵の殻がチクチクと頬の粘膜に突き刺さる。清々しいまでの不協和音。
……マズッ
顔をしかめて呟くが、どこか嬉しそうに微笑む横顔。
──…これでよし!
エドとアルはたまご焼きを入れ物に詰めると、リトのいそうな場所へと駆け出した。
今日のたまご焼きは甘めに作ってあるらしい
(そういや……何で爆発したんだ?)
(胡椒と火薬を間違えたみたいです)
((料理作るの暫く禁止!!))
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