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その瞳が閉じる今だけは/フレエス


「…すぅー」

心音に呼応する、エステリーゼ様の寝息。時計の針が頂点を指している。

窓から射す月影が彼女の頬を露わに晒し、悪戯な風が彼女の睫毛を揺らす。私は雀踊するカーテンを閉め、ふと思い巡らせた。
凛と揺るがぬ目で世情を映し、虚ろな目で窓からの景色を映し、憤怒を孕んだ目で敵を映し。常に彼女は現実を見てきた。幼き少女にはそぐわぬ、荷が重すぎる現実を。
そんな彼女の瞳が唯一、輝く時を知っている。
私が彼女を見つめるように、彼女もまたあいつを見つめていた。その時の瞳は年相応の、輝く瞳だった。

彼女に光を与えられるなら、耐え忍ぶ事も厭わない。



けれどせめて、その瞳が閉じる今だけは

僕の側にいてはもらえませんか?





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