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Clap



 雨の日だった。
 カーテンを開いた瞬間世界は一面灰色で、ベランダに雨が吹き込んで突っ掛けが小さな水たまりの中で浮いていた。時折仄かに灰色が一部分だけ発光し、窓越しでも微かに遠雷が聞こえてくる。もっと酷くなるかもしれない、と直感が働いてすぐ傍にあった植木鉢を部屋の中へ下げた。
 思えば、あの日もこんな雨の日だった。
 否、その瞬間は降っていたかどうか酷く曖昧だ。けれど靴の中に染み込んだ雨水がぐずぐずと不快な音を立てていたことやその日にお気に入りの傘を失くしたことはよく覚えているので、少なくともその日は雨が降っていたはずだ。
「そろそろ起きてくれてもいいと思うんだけど」
 元々は自分の場所であったスプリングのベッドを完全に占領している"それ"は未だ暢気な寝息を立てるばかりで一向に起きてくる気配はない。
 拾ったのは三日ほど前の雨の日。意思疎通ができたのは死にそうな顔で助けを求めてきたその瞬間だけだった。すぐに気を失い、どうしようもなくなり拾って家まで引き上げ、必死の思いで介抱を続けてもう三日目。
 そろそろ床で寝るのも辛くなってきたのだが、これは一体いつ目覚めるのだろうか。
「起きてくれませんかー、おーい」
 犬の耳によく似ている垂れたものを引っ張り、少し強めに揺さぶる。人でも噛み殺せそうな尖った歯を不快そうにぎりぎりと擦りながらそれは一度寝返りを打った。
「あれ、起きそう」
 今までも何度かつついてみたのだが、反応があったのは初めてだった。これはもう一押しでいけるかもしれない。
「起きろちびちゃーん」
 異常に長い腕を持ち上げて振り、未だに唸る体を揺する。何度も繰り返していると観念したように瞼を持ち上げた。
「起きた! ねえ、キミ一体なんなの?」
 しばらく眩しそうに瞬きを繰り返していたが、こちらの事を認識するなり眉根を寄せて猛禽類のような逞しい鳥足でこちらの腹を蹴ってきた。
「うう、んあ!」
「……え?」
 まるで理解できない言葉を吐かれ動揺から手を離してしまう。この異形は確かに三日前自分に「助けて」と言ってきたはずなのに。


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