20110715 | ナノ



自分は本当はどんな声をしているんだろう。自分の声は、どんな風にきこえているのだろう。さらに言えば、私はどんな風に思われているのだろう。
Nと話す時に限って、そんなことばかり考えてしまう。何故なの。
道端にしゃがんで小さな花を摘んでいると、後ろから歩いてきた誰かが私の隣に並んでしゃがみこんだ。脚が長い、見慣れたベージュのズボン。悩みの種である、Nだった。

「どうして貴方……」

私がそう尋ねると、彼は何も言わずに目を細めて微笑んだ。顔色は不健康そのものだけど、私に向けられた笑顔だけは不思議と暖かい。

「それは、何をしているんだ」
「……花占い」
「やり方を教えてくれないか」
「こうやって」

好き、嫌い、好き、嫌い。最後の花びらをちぎった時に「好き」なら、好きな人から好かれている。

「なるほど。やってみよう」
「うん、やってみて」

可憐な花と、それを持って占いをするNは、妙に儚く見えた。
誰をおもって、花を見つめているの。つい声に出しそうになって、思わず口を押さえた。
自分の中にある感情に、どうして今気が付くの。私。どうして、相手が彼なの。

「トウコ」
「ん?」
「花占いによるとトウコは、僕のことが好きらしいのだけど、あってるかな」
「……うん、好きだよ」
「僕も、君が好きだ」

同じ言葉、同じ漢字、同じ響きなのに、こんなにも意味が違う。私の言う「好き」は、どんな風に聞こえているんだろう。
彼の言う「好き」の意味が友情であるように、私の「好き」もまた、友情として彼の耳に届いているのだろうか。

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