20120711□関係 | ナノ


いつからかあたしはチェレンが好きで、チェレンはトウコが好きだった。トウコはトウヤが好きだった。トウヤは、あたしに「ずっと好きだった」と言った。どこかでわかっていたはずなのに、見ないふりをし続けた結果が今、あたしの目の前にある。
トウヤの告白をきいて呆けていたあたしの両肩に、彼は自分の手を乗っけた。「掴む」なんて言い方は到底できないような、優しさばかりを感じる力の強さ。

「俺さ。ベルがチェレンのこと好きって、知ってたよ」
これも、ずっとね。
笑いながらそう付け足した彼の顔には、あたしが今まで見たことのない表情が浮かんでいた。そういえばあたし、彼の顔をこんなに近くで注意深くながめたことがなかったかもしれない。幼なじみなのに、たったの一度も。
トウヤは、こうやってちゃんと見れば、すごくかっこいい男の子なんだなぁ。口には出せないけれど、本心からそう思った。ここにきて、初めてそんなことに気付かされる。トウコはきっともっと、彼のいいところを知っているんだ。
彼女がいつも、あたしのことを「優しいね」と言って褒めてくれていたことを思い出す。
ずっとチェレンのことばかり見て、チェレンのためだけに居たあたしなんかにそんなことを言ってくれるトウコのほうが、何倍も優しいのに。

「……トウコが、トウヤのことどう思ってるか知ってるよねぇ」
「わからないはずがないだろ」

みんな、お互い誰が誰を好きなのか知っていたのに。
チェレンもトウコももちろんあたしも、そしてトウヤも。

「ベルが俺のこと好きになってくれるまで、待とうと思ってたんだ」


なんて返せばいいのかわからなくて、あたしはただトウヤの目を見続けていた。トウヤのあたしを見る視線の中には、あたしに無い優しさがあって、それがあたしの胸を苦しめる。
トウヤがチェレンだったらよかったのに。こんなことを考えてしまうあたしは、本当に最低な、チェレンが嫌うような、だめな女の子だ。

「だけど、ベルは今もチェレンしか見てないだろ。だからもう、やめるよ」

その言葉にほっとしているあたしがいて、そしてそれに気付いているトウヤがいる。
……こんなの間違ってるってわかっているのにあたしは、あたしたちの全てがうまくいくことより、こんな間違いを望んでいたんだ。

「最後、っていうか。一回でいいからさ、抱きしめさせてよ」
「……うん」

返事をするよりもはやく、トウヤがあたしの肩を引き寄せるよりも急に、あたしは彼の腕の中に飛び込んだ。あたしを好きな男の子の匂いが、甘い毒のように誘ってきたから。涙がぽろぽろと、トウヤの服を濡らしていく。あたしの背中をさすってくれる愛しい手も、本当はトウコのために在るべきだったのに。彼の腕の暖かさを背中に感じながら、チェレンに告げるべき言葉を考えていた。チェレン。あたしもね、チェレンが好きだったんだ、ずっと。

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