20101011 | ナノ


確かに、僕たちが付き合いはじめたのはつい最近のことだ。しかし両想いだった期間や幼なじみとしての付き合いが長いことを考慮すれば、もう手を繋ぐ以上のことはしてもいい時期なんじゃないか、と思う。
だからと言って、勝手な欲を押し付けてベルを嫌がらせたくはない。せめて彼女の気持ちを理解できるようなスキルがあればよかったけど、こののほほんとした幼なじみがどこまでの行為を許してくれるのか僕には到底わからないので、彼女がほしいという気持ちは相変わらずのままやっぱりなにもできずにいる。

ベルは今僕の肩に寄り掛かってきていて、触れ合っている部分からは僕の鼓動が彼女へと伝わっていきそうだ。
それでもまだ遠い僕らの距離は、いつになればゼロにできるんだろう。

「ね、チェレン…」
「うん?」

とろけた声のする方へ目をやると、ベルはこちらを見ていた。僕より身長が低いせいかこういう時彼女は決まって上目遣いになるのだけど、そのまんまるの両目がまたかわいくて仕方ない。

「えっと、あたしねぇ…」
「…うん」

艶めく唇。さらさらの髪。ちらりと覗く白い胸の谷間。どくどくと脈を打つ心臓はいつ破裂するかわかったものじゃない。
僕は本当にだめな奴だな、ぼんやりとそう考えながら生唾を飲んで彼女の言葉を待つ。真っ赤な顔が何かを期待しているように見えるのは、僕の勝手な思い込みだろうか。

「あの…ね、キスとか…したいなぁって。ずっと思ってたの」


僕は知らぬ間にベルの両肩を掴んでいた。一瞬、びくりと肩の震えが伝わってくる。
一心に僕だけを見つめる彼女の顔には、少し困っているような照れた表情が浮かんでいた。もう、この世界には僕らしかいないんじゃないか。そんな錯覚に陥る。

「そ…それで、ね」




……キスしようか。息がつまる思いでそう言おうとすると、それを見計らったように大音量の着メロが部屋中に鳴り響く。…ありえない、どうして今日に限ってマナーモードにしなかったんだ。とにかくこのままではまずい。
戸惑う彼女の肩からゆっくりと手を浮かせ、急いで自分の携帯を開く。着信はトウヤからのものだった。さすがに溜息を尽きたくなったが、なんとか堪える。僕はつくづくタイミングが悪い。

「…ごめん、トウヤからだった」

今度は鳴らないようマナーモードに設定して、普段より力を込めて携帯を閉じた。自分が悪いとは言え、さっきのムードが壊れたのはすごく惜しかった気がする。

「う、ううん!…あ、お腹空いたなぁ」

何か取ってくるねぇ。にっこりと微笑むと、たたたた、と軽い音を立てながらベルは階段を駆け降りていく。
今さっきのことなんてとっくに忘れたような彼女の眩しい笑顔は、僕のよこしまな妄想に全く気付いていないことを暗示しているかのように思えた。

それから僕は、不思議な後ろめたさにどんどん押し潰されていく。






‐‐‐‐‐
未遂に終わる。
トウヤ「え?なんかよくわからないけどごめ…え?なにが?あ、そう」

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